『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』可笑しくも切ない物語が伝える“生きることへの執着”

『ゾンみつ』が伝える“生きることへの執着”

 先ごろシーズン10の制作が決定した海外ドラマ『ウォーキング・デッド』はもちろん、Netflixで配信中の韓流ドラマ『キングダム』、そして大ヒットした映画『カメラを止めるな!』と、近年ゾンビ・エンタメがすこぶる隆盛である。

 メタファーとしてのゾンビが象徴しているのは、薄い膜のように私たちを覆う漠然とした“不安”や“危機感”だ。政治の世界では毎日のようにウソが暴かれ、自分の非を認めず開き直る大人が増え、痛ましい子どもの虐待のニュースが後を絶たない。駅のホームを見れば自分も含め、もれなく首を垂れスマホをじっと覗き込む人々の群れがそこにある。常に何かに追われ、生きているのか死んでいるのか分からない。いつしか自分はゾンビのようにこの世を彷徨っていないだろうか?

 まるで合わせ鏡のごとく、私たちの不安を映し出すゾンビ。そんな不安を吹き飛ばすことができるのは、どんな形であれ、生きることへの“執着”にほかならない。視聴者である私たちは、ゾンビが来て人生を見つめ直している登場人物たちを通じて、己の人生を見つめ直させられているのだ。

 劇団MCRの主宰にして本作の脚本を務める櫻井智也氏が、この可笑しくも切ない物語をどうまとめてくれるのかしっかりと見届けたい。

■中村裕一
ライター。ドラマについて書いたり言ったりするのが得意といえば得意です。Twitter:@Yuichitter

■放送情報
よるドラ『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』(NHK総合)
毎週(土)後11:30~11:59(全8回)
作:櫻井智也
演出:梛川善郎、中野亮平、野口雄大
音楽:サキタハヂメ、小山絵里奈
出演:石橋菜津美、土村芳、瀧内公美、大東駿介、渡辺大知、山口祥行、片山友希、根本真陽、川島潤哉、阿部亮平、葛城ユキ、原日出子、岩松了 ほか
提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/drama/yoru/zombie/

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