『イノセンス 冤罪弁護士』坂口健太郎が見せた名演技 藤木直人と市川実日子のやり取りにも注目
第3話にしてはじめて「死」にまつわる冤罪事件が描かれた『イノセンス 冤罪弁護士』(日本テレビ系)。13歳の娘を失った被害者遺族が発した“どうにもやりきれない感情”が、黒川拓(坂口健太郎)や和倉楓(川口春奈)にも連鎖していくように伝わっていき、悔しさから生じる涙や怒りなど、今までにはなかった表情があらわになった。
今回、拓率いる弁護士チームが挑んだのは、総合病院に潜む内部政治の闇。冒頭、医療ミスが原因とされた患者の死亡事故の罪が、病院全体に関わる問題かもしれないなかでひとりの執刀医・雲仙(平岳大)に業務上過失致死として被せられてしまう。弁護の依頼を受けた拓らは、病院が制作した事件の内部調査報告書を雲仙とともに確認。すると、冤罪に関わる一連の動きは、雲仙の同期であり出世頭の医師・磐梯(山本耕史)の根回しによる隠蔽工作であったということが明らかに。真相を追う拓は、所属する弁護士事務所の所長・別府(杉本哲太)に行く手を阻まれながら、失職をかけてでも事件の原因究明に挑んでいく。
大規模実験によって、医療事故は病院の怠慢による設備不良が起こしたものだったという真相が明らかになっても、判決はまさかの有罪。そして真実はより一層不明瞭に。怒りの対象を見失って苦悶する遺族に詰め寄られた拓は、目頭を熱くしながら“やりきれない”悔しさをふつふつと燃え上がらせる。
印象的だったのは、この難しい感情を見事に演じきった坂口健太郎という役者の存在感だ。熱のこもった演技というよりはどこか冷めているような、落ち着いた演技をする印象がある坂口。そうした“感情を排除”したような演技が光るなか、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)などの出演過去作では、悲哀や怒りの感情を静かに表出する姿を垣間見せてきた。飄々としたキャラクターである拓が見せたエモーショナルな表現は、坂口の演技の真骨頂といってもいいだろう。そのギャップは、見るものの感情を否応なく揺さぶりにかかってくる。どうしようもない苦悩を抱える遺族と拓の一方で、問題があるならば「いずれ」ではなく「今」変えるべきだという拓の誠実な言葉と病院の改善案を示す雲仙の思いを受けた磐梯は、病院の改革へ向けて動き出した。