ディーン・フジオカの人生から学んだこと 『レ・ミゼラブル 終わりなき旅路』とともに新たな時代へ
混沌とした時代には、その境界線が一層見えにくくなる。価値観が多様化し、環境も大きく変わった平成の30年間で、私たちはそれぞれの良心や道徳心でなんとなく区切られていた境界線が、あやふやでは済まされなくなったことを突きつけられた。親心を利用した詐欺なんて起こるはずがない、子どもが大人顔負けの重大犯罪を犯すはずがない、助け合わないとならない被災地で卑劣な行為なんて起こるはずがない……そう思っていた常識は次々と崩壊し、そのたびに警戒心を強めていった。
罪を憎んで人を憎まず。かつての日本にあったこの言葉も、なかなか難しいものになってきたように思う。情報にアクセスしやすくなった今、ネガティブな言葉ほど伝わるスピードが速い。涼介のように自分の望む事実ばかりを収集することもできる。事実はひとつでも、その情報を受け取る人によって真実はいくらでも異なってしまうのだから。だからこそ、みなまで聞かずに純を信じた徳田や拓海のやさしさが際立ったドラマだったのかもしれない。
それでも、正直者がバカを見るという世の中は、やっぱり寂しい。一度の失敗で全てが終わりになってしまうヒリヒリとした世界は、息苦しい。どうしたら、多くの人が優しい気持ちで共生できるのか。そんな永遠のテーマを、それぞれの時代の人たちは、どのように結論づけたのか。原作が発表された1800年代から2019年まで、様々な形で作品となってきた『レ・ミゼラブル』を、改めて紐解いていきたいと思った人も少なくないだろう。今作と同じチームが制作した、赦せない思いだけを支えに生きた復讐劇『モンテ・クリスト伯―華麗なる復讐―』(フジテレビ系)もまた見返したくなった。いい作品は、次の行動へとつながる。もし、一人ひとりがこのドラマをきっかけに“誰かを信じてみよう“と思えたら。その小さな変化が、来るべき新たな時代を優しい世界にするかもしれない。
(文=佐藤結衣)
■放送情報
フジテレビ開局60周年特別企画『レ・ミゼラブル 終わりなき旅路』
出演:ディーン・フジオカ、井浦新、山本美月、吉沢亮、村上虹郎、清原果耶、松下洸平、清水尋也、福田麻由子、長谷川京子、金子ノブアキ、富田靖子、寺脇康文、伊武雅刀、かたせ梨乃、香里奈、奥田瑛二
原作:ヴィクトル・ユゴー『レ・ミゼラブル』
脚本:浜田秀哉
音楽:吉川慶
演出:並木道子
プロデュース:太田 大、野田悠介
制作著作:フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/lesmiserables/