クドカン率いる『あまちゃん』チームが再集結! 『いだてん』落語を通した“笑い”の視点

 ホームページ等であらすじや人物相関図を見ても、単純なドラマではなさそうである。物語は明治から戦時下へと向かっていく前半と、東京オリンピック開催へと向かう戦後の二部構成。登場人物は、オリンピック招致を目指す東京都知事やジャーナリスト、金栗四三とその家族、金栗の盟友の三島弥彦(生田斗真)を中心とする三島家と金栗を応援する天狗倶楽部の人々、金栗の恩師にあたる嘉納治五郎(役所広司)の所属する東京高等師範学校・大日本体育協会の面々。そして、若き日の古今亭志ん生こと美濃部孝蔵(森山未來)をとりまく浅草の人々といった感じで、複数のコミュニティが同時に描かれている。つまり、視点が多数あるということだ。

 クドカンドラマは元々、地方のスナックのような小さな共同体の狭い人間関係を延々と描くスタイルのものが多い。そのため、友達の知り合いの話を聞いているかのような心地よい狭さがあるのだが、家族の歴史や細かいサブカルチャーの引用を用いて“歴史のようなもの”を描いてきた。

 それが顕著に出ていたのだが、現代を生きるヤクザが、落語という古典と出会い噺家となることで、疑似家族という自分の居場所を見つけていく『タイガー&ドラゴン』(TBS系)だろう。本作は『池袋ウエストゲートパーク』や『木更津キャッツアイ』(ともにTBS系)といったドラマで若者の風俗を描くことに長けた新鋭の若手脚本家というイメージが定着しつつあった宮藤が、幅広い視聴者が楽しめる普遍的な作品をはじめて作り上げた記念碑的作品だ。

 『いだてん』に噺家が登場し、ストーリーに落語のモチーフが入ると知った時、真っ先に思ったのは『タイガー&ドラゴン』を発展させたような作品になるのではないかということだ。それはキャスティングからも伺える。主演の一人に宮藤と同じ大人計画に所属し、何度も宮藤のドラマや映画に出演した阿部サダヲがいることはもちろんのこと、峯田和伸、星野源、生田斗真といった宮藤の過去作に登場した俳優たちが多数出演し、古今亭志ん生を演じるのが、宮藤が尊敬し今の仕事を志すきっかけとなったビートたけしが名を連ねていること。

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