菊地凛子演じる呉羽はなぜ魅力的だったのか 『けもなれ』が問いかけた“自分の人生を生きる”こと

『けもなれ』呉羽がなぜ魅力的だったのか

 社会が進化するほど、様々なことが合理化されてきた。0から商売を始めるよりも、軌道に乗った会社に入ったほうが安定しているし、長いものには巻かれた方が何かと面倒は起きにくい。“これが幸せだ”と定義づけられたレールを走るほうが、文字通り無難だ。だが、ひとつの成功をなぞっていくだけでは満足しない人、挑戦し続けることに“自分の人生を生きている”と感じる人もいるのだ。例えば、リアルすぎてくるしくて苦いドラマを作る人がいるように。

 「そんなリスクを追うなんてバカだ」という人がいる一方で、「いいんじゃない? バカで」と笑い合える人もいる。ビールだって「飲みやすいのがでいい」という人もいるし、「もっと苦いのを味わってみたい」という人もいるのだから。もちろん「そんなの認めへん!」と大きな声を出す人もいるだろう。それぞれの正義が完全一致する日なんてない。

 だからこそ、様々な味のビールが作られるし、その中で「これは!」と自分が求めていたものと出会える喜びがある。それこそが人生の醍醐味というもの。日常は遅々として進まないように見えて、長い目で見れば確実に変化していく。誰かと共に生きても、自分の人生は自分のものであること。自分の中の正義を見失わず、誰かのためにすり減ることなく、ときには傷ついた友に肩を貸し、一緒に美味しいもので英気を養っていけたら。もっと自分を、そして誰かを“好き”だと告げる鐘の音がよく聞こえるようになるかもしれない。

(文=佐藤結衣)

■作品情報
『獣になれない私たち』
出演:新垣結衣、松田龍平、田中圭、黒木華、菊地凛子、田中美佐子、松尾貴史、山内圭哉、犬飼貴丈、伊藤沙莉、近藤公園、一ノ瀬ワタル
脚本:野木亜紀子
演出:水田伸生
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:松本京子、大塚英治
協力プロデューサー:鈴木亜希乃
制作会社:ケイファクトリー
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/kemonare/

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