『まんぷく』岡崎体育が見事なハマり役! 一筋縄ではいかない存在感が今後も重宝される?
ならば、もっとせばめて考えてみよう。たちばな塩業(現在の社名は、たちばな栄養食品)一同が入る雑居房を見張る、日系二世の進駐軍のアーミー、チャーリー・タナカとは、どういうキャラクターなのか。見た目は単なる関西のあんちゃんだが、タレ目グラサンをかけて英語をしゃべる、というギャップが必要。だからシュッとした男前よりも、コミカルな見た目の方がいい。つまり、フックとなるわかりやすいファクターが、外見にあった方がいい。その上で、タレ目サングラスかけると観る者をナチュラルにイラッとさせるような、ふてぶてしい面構えである方が望ましい。
そして、アメリカで人種差別でつらい思いをしてきたので日本に対する複雑な思いを抱えている。で、最初はたちばな塩業の面々に対していばり散らすイヤな奴だったが、どうやら本当にこの人たちは無実であることがわかってくると、内心では彼らに同情的な気持ちが生まれる。つまり、根はいい奴であることが、観る側にもだんだんわかってくる。というキャラクターであり、ふてぶてしいツラに、そのような微妙な感情がにじむことも、増えてくるーー。
どうだろう。こうして書いているうちに、どんどん岡崎体育一択しか考えられなくなってきた気がしないか。たとえば他に「チャーリー・タナカ役、ありかも」と思える役者、誰かいるだろうか。加藤諒。ダメ。「日系二世」以外のファクターが強すぎだし、そもそも彼が出るにはちょい役すぎる。塚地武雅も同様の理由でダメ。とろサーモン久保田。ダメ、「実はいい人」感が見えにくい。サンドウィッチマン伊達。ダメ、ストレートに怖すぎる。『半分、青い。』に出ていたばかりだけど矢本悠馬。ダメ、ふてぶてしさが足りない。駒木根隆介……お、一瞬「いいかも」と思うが、外見からいい人っぽさがわかりやすく出すぎなので、やっぱりダメ。
と考えていくと、キャスティング側が岡崎体育を見て「ああっ、こいつだ!」となったのも、頷けはしないだろうか。
なお、岡崎体育、懸念だった英語のセリフも、日本語のセリフも、「こいつ役者じゃないな」という違和感を特に醸すことなく、普通に言えていた、というのも大きい。さっき例に出したコータローさんは、正直「本業じゃなさ」がにじむセリフの言い回しでした。
今後、ピエール瀧や浜野謙太のように「役者業もひっぱりだこのミュージシャン」になるかどうかまではわからないが、芝居をする彼をもうちょっと観ていたい、と思ったのは、僕がミュージシャン岡崎体育を好きだからというだけではない気がするのだった。
※追記:以上のテキストを編集部に送った翌日、白石和彌監督・斎藤工主演の映画『麻雀放浪記2020』に岡崎体育が出演していることが発表になった。さすが白石監督! と言わざるを得ない。公開は4月5日。楽しみに待ちます!
■兵庫慎司
1968年生まれ。音楽などのライター。「リアルサウンド」「CINRA NET.」「DI:GA online」「ROCKIN’ON JAPAN」「週刊SPA!」「CREA」「KAMINOGE」などに寄稿中。フラワーカンパニーズとの共著『消えぞこない メンバーチェンジなし! 活動休止なし! ヒット曲なし! のバンドが結成26年で日本武道館ワンマンにたどりつく話』(リットーミュージック)が発売中。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『まんぷく』
10月1日(月)~2019年3月30日(土)【全151回】
作:福田靖
出演:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平/桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、松坂慶子ほか
語り:芦田愛菜
制作統括:真鍋斎
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/mampuku/