年末企画:田幸和歌子の「2018年 年間ベストドラマTOP10」 新時代への意気込み感じる作品揃う
毎クール1作はぜひとも欲しい「ミステリー&サスペンス」分野の佳作には、キャスティングと脚本、演出、音楽、映像の瑞々しさと美しさが突出していた『青と僕』などを挙げました。骨太サスペンスドラマの『記憶』『シグナル』は、もともと「サスペンス」に強い韓国ドラマを高い熱量で本気でリメイクしたことにより生まれた傑作です。韓国ドラマリメイクの成功例として、新たな鉱脈の発見になったのではないでしょうか。
ところで、上位10作に絞り切れずに11作となってしまった優柔不断な自分が、即決で1位に挙げたのが、先述した中井貴一主演の『記憶』です。
若年性アルツハイマーを患った敏腕弁護士が、徐々に失われていく「記憶」というタイムリミットと戦いつつも、事故で息子を失った過去の未解決事件に、弁護士人生のすべてをかけて挑むストーリーでした。
テーマは決して「病」ではありません。むしろ記憶を失っていくことで再確認できた「仕事への誇り」と「家族再生」の物語でした。病状が進行し、焦り苦しむ一方で、主人公はこれまで見逃してきた小さな幸せを発見していきます。子どもを失ったことで過去に縛られ続ける元妻の悲しみにも、夫の病を知った妻の覚悟にも、最初は胡散臭く見えた週刊誌記者や管轄外の刑事が仲間に変わる頼もしさにも、頼りなかった部下の成長ぶりにも、いじめから救ってくれた父への尊敬ととともに、病を抱えた父に代わって家族を守ろうとする息子の強い思いにも、涙が出ます。恥ずかしながら、全12話を3回ずつ観て、3回とも毎回泣きました。感動と「1話ずつ終了に近づく」悲しみからです。
2018年の最高傑作として自信を持って押したいですが、残念なのは認知度が低いこと。それもそのはず、3月にフジテレビNEXTライブ・プレミアムとJ:COMプレミアチャンネルで放送された後、地上波では11月に「メディアミックスα」枠で午後3時50分から~、12月にBSフジで午後6時から放送された作品なのです。
なぜこんな秀作をゴールデン・プライム枠で放送しないのか。様々な事情はあるのでしょうが、今年のドラマ全体を見ると、フジテレビ系列の健闘ぶりが目立つだけに、良作が深夜枠やBS・配信ドラマに集中していることは少々惜しまれます。新時代には、どうか自信を持って、ゴールデン・プライム枠でぜひ冒険を!
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■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。