沢口靖子は“ご長寿アニメキャラ”のよう? 『科捜研の女』シリーズ長期化支えるマリコの変化
だが、シリーズが長期化し、クールで無表情で上品かつ知性的なキャラに変わっていった。その理由は明らかにされていないが、おそらく殉職する刑事などもいる環境と、マリコ自身の加齢と経験、さらに共演者が入れ替わることによる関係性の変化によるシフトチェンジなのではないか。
そして、このキャラクターチェンジこそが、実はシリーズ長期化を支える肝だったと思う。そもそも事件解決の糸口となるわずかな証拠や、かすかな違和感などを描く作品の性質上、情感たっぷりな演技や、繊細でリアルな感情表現などは、本筋にとって邪魔になることがある。
また、極力表情の変化を抑えた演技と、冷静で淡々とした喋りのヒロインだからこそ、意外にも情に脆く、不意に涙をこぼしたり、名コンビである土門(内藤剛志)に嫉妬したり、動揺したりする感情のかすかな表出に、視聴者はドキッとさせられ、可愛いと思ってしまう。
さらに、シーズン16からは、「老けないご長寿アニメキャラ」のような安定感抜群のビジュアル特性を存分に生かし、「衝撃的なマリコのワンカット」も導入。動物の着ぐるみを着たり、新選組になったり、「マリコ姫」になったり、シャーロック・ホームズになったり、肉と一緒に吊るされたり、遊びまくっている。まるで人気キャラ同士のコラボを見るような贅沢感があるから、不思議だ。
年齢を重ねても渋みや深みに移行していくのではなく、少女のような可憐さと透明感、猪突猛進の真っすぐさを維持し続け、雑味を落とし、純度の高さを極めている女優・沢口靖子。制作サイドの創作意欲を刺激し、視聴者を常にワクワクさせてくれる存在として、いつまでも変わらず、キュートであり続けてほしい。
■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。
■放送情報
木曜ミステリー『科捜研の女 season18』
テレビ朝日系にて毎週(木)20時放送
出演:沢口靖子、内藤剛志、若村麻由美、風間トオル、金田明夫、斉藤暁、渡部秀、山本ひかる、西田健、石井一彰
ゼネラルプロデューサー:関拓也
プロデューサー:藤崎絵三、中尾亜由子、谷中寿成、
監督:田﨑竜太
脚本:李正姫
制作:テレビ朝日、東映
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/kasouken18/