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真の主人公は田中圭? 『スマホを落としただけなのに』で課される“愛の試練”

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 『スマホを落としただけなのに』というタイトルを耳にしただけで、おそらく多くの方がネガティブな想像を膨らませるはずである。誰もが一度や二度は、スマホを紛失してヒヤリとした経験があるだろう。志駕晃による同名小説を、中田秀夫が映画化したこの物語の主人公は、想像以上に、とことんまで追い詰められていく。

 のんきな音楽に、のんきな表情。これから起こる恐怖体験とは無縁だと言わんばかりに、富田誠(田中圭)は商談へと向かうタクシーの中、恋人へのメッセージをどのように打とうかと考えあぐねている。そんな姿がスクリーンに映し出され、彼の陽気な心の声は私たち観客のもとへと届き、今夜、恋人にプロポーズするつもりだというのが分かる。

 そのお相手は、商社に勤めるOL・稲葉麻美(北川景子)。画面は二つに分割され、そこには彼らのメッセージのやり取り、そして二人の笑顔が同時に映し出される。これを見るかぎり、このカップルはどうやら上手くいっているようだ。……と、その微笑ましい光景を心穏やかに見つめてしまう。こんな調子が20分以上も続き、ようやく映画は表情を変えはじめる。ほのぼのラブストーリーからサスペンスへ、やがてさらにはスリラーへと変貌を遂げていくのだ。とうぜん穏やかではいられなくなる。この男がスマホを落とした、たったそれだけのことが引き金になってだ。

 スマートフォン、通称・スマホ。いまや誰もが持っている、日々をより豊かに過ごすためには必須のアイテムだ。ある者はこれで稼ぐことができるし、またある者はこれだけで犯罪に手を染めることもできる。これ一つでなんだってできると言っても過言ではなく、その可能性は無限大だ。ということだけあって、富田がスマホを落としたことによってはじまる悪夢は、スマホを持つ誰もが多大なリアリティを持って受け取ることだろう。しかし、大きな被害を受けるのは彼以上に、恋人である麻美の方だ。スマホに保存されている麻美の写真の数々を見て、どうやら犯人は彼女に興味を持ったようなのだ。

 アカウントの乗っ取りや、ネットストーキング、あるいはSNSのなりすまし、劇中に見られるこれらはあまりに執拗で極端ではあるものの、日頃からよく耳にする話なだけあって、やはりゾッとせずにはいられない。それらはフィクション化するにあたって誇張したに過ぎず、実際に大なり小なり、身に覚えのある方も多いのではないか。ジワジワと麻美の精神を蝕んでいくさまは、明日の我が身にも降りかかりそうなものばかりで、緊張感は持続し、慄然としながらも画面から目を離すことができない。麻美を追い詰めるこの犯人、いわゆるサイコパスである。彼が麻美の前にその姿を見せることで、映画はサスペンスからスリラーへと変わっていく。

      

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