瀬戸康史、天性の“人懐っこさ”を発揮 『まんぷく』神部役で物語を動かす

瀬戸康史、天性の“人懐っこさ”を発揮

 瀬戸が神部の人懐っこいを丁寧に演じることで、彼の起こす行動に嫌な雰囲気は一切感じられない。神部は、盗みに入った彼を許した萬平と福子に恩返しすることを決意。盗みに入った翌朝には、誰に言われるでもなく香田家の掃除をはじめ、次の日には再び香田家にやってきて子供たちの家庭教師を名乗り出る。この行動は字面だけ見ると強引さが感じられるかもしれないが、朗らかな笑顔を見せる神部の姿に不穏な空気は皆無だ。初登場してからすぐに物語に溶け込み、福子たちの家族の一員のようになる神部。その姿に図々しさを感じないのは神部のキャラクターを理解し演じている瀬戸の影響も大きいだろう。

 公式インタビューで瀬戸は「戦争の経験はもちろんありませんが、極限の状態にあったら、堕ちるところまで堕ちても不思議ではない」と、戦争によって何もかも失い「盗み」を選択せざる得なかった神部の心情を理解しているようだった。そのうえで、押しかけるように香田家に転がり込んだ神部について「そのままずっと居座るって、すごいですよね(笑)」と語る。しかし瀬戸は、居座ることができる神部の人なつっこさを「たくましい人間力」と評し、演じるうえで大切にしていると話した。(NHKドラマガイド『まんぷく』パート1参照 )

 役柄の背景を理解し、役柄の長所を尊重するような姿勢を見せる瀬戸。そんな彼は、新しい役柄や体験したことのない演出に対して柔軟な考えの持ち主のようだ。第6週からはじまるストーリーでは、萬平の塩づくりに関わるキャラクターが多く、ひとりひとりに演出をつけるのが容易ではないようだ。しかし彼はその環境に対して「やりがいを感じる」と答え、「台本に書かれていない『間』をどう埋めるのか。エチュード(即興劇)をしているみたいで楽しいですね」と話している。

 演技に対して常に真摯な態度を見せる瀬戸。あらゆる役に対し柔軟な瀬戸だからこそ、全力で2人に恩返ししようとする神部が起こす行動に期待が高まる。新たな発明を試みるため泉大津に向かう萬平と福子にとって、神部が重要な人物となるに違いない。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『まんぷく』
10月1日(月)〜2019年3月30日(土)【全151回】
作:福田靖
出演:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平/桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、松坂慶子ほか
語り:芦田愛菜
制作統括:真鍋斎
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/mampuku/

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