培ってきた力で物語を引き立てる 『まんぷく』芦田愛菜によるナレーションの魅力

『まんぷく』芦田愛菜のナレーションの魅力

 それから、中学生になった芦田は、テレビ朝日の『気づきの扉』というミニ番組で初のナレーターを務める。様々な著名人たちを成長させた“気づき”にまつわるエピソードを紹介する番組で、「テーマやメッセージの内容に合わせて読み方を変えたり、ここはと思うところは感情を強めに表現したりして、見る方に届くように頑張った」とコメント。実際聞いてみると、最初は成長した声に芦田とは気づかず、吹き替えの時とは違い、しっかりと俯瞰で物事を伝えるトーンで語り、エピソードのピークになると演技とはまた違った力強い声で気持ちを伝えていた。

 そして今年、朝ドラ『まんぷく』のナレーションに抜擢される。本作は、インスタントラーメンを生み出した日清食品の創業者の安藤百福とその妻・仁子の半生をモデルに描いた物語。芦田がブレイクした時に「チキンラーメン」のキャラクターである「ひよこちゃん」を演じていたCMが話題となったが、それから大きくなり、創業者の物語を神の視点で語ると言うのは感慨深いものがある。

 ナレーションについて芦田は、「15分という短い時間の中で、お芝居をより分かりやすくするために、ナレーションはあるのかなと思っていて、そのシーンの雰囲気を壊してしまわないように、“良い意味で存在感を消して”、少し離れたところから登場人物たちを見守っていられるような存在でいられたならと。その雰囲気にあったナレーションをするというのは、演じるという部分にもつながったりするのかなと思います。変に気取ったりせずに、等身大の私でナレーションを出せていただいてます」と語っている。今までの朝ドラは出演者以上にナレーションが心情を語ったり、物語の展開をナビゲートする役目を果たしてきたが、若手ではなく安藤サクラと長谷川博己といった実力派が主演を務めているのもあり、『まんぷく』では極力それを抑えて、芦田が培ってきた確かなナレーション力でドラマを引き立てている。また、戦前から始まる昔の話であり、ヒロインを含めて若干年齢が高めのキャスティングとなっているので、そこで若い人の声を入れたことは正解だと思う。

 最近の芦田は、学業との両立もあってか連続ドラマよりCMやナレーションで見ることが多い。中学生という成長過程の難しい時期でも、等身大の自分を出せるキャラにうまくシフトチェンジをしたと言えよう。子役から声優になる人は多いが、芦田もまた、声というジャンルでもこれからもっと活躍していきそうだ。

(文=本 手)

■放送情報
NHK連続テレビ小説『まんぷく』
10月1日(月)〜2019年3月30日(土)【全151回】
作:福田靖
出演:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平/桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、松坂慶子ほか
語り:芦田愛菜
制作統括:真鍋斎
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/mampuku/

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