『まんぷく』浜野謙太が大評判! “笑いを誘う”存在感がお茶の間に求められる理由?

『まんぷく』浜野謙太が大評判の理由


 知り合いとかの依頼でちょっと俳優仕事をやる→特に売り出しているわけでもないのにどんどん仕事が増える→今やすっかり俳優、でも今でも並行してミュージシャン。という偉大なる前例としては、誰もがピエール瀧を思い出すだろう。ピエール瀧の後に続いた存在としては、たとえば峯田和伸も、渡辺大知も、ちょっとアングルが違う気がする。ドンピシャなのはハマケン、そんな気がしないだろうか。

 僕はするのでこのまま話を続けるが、そこまでひっぱりだこになった理由も、ピエール瀧と近いのではないか、と、ドラマや映画の彼を観ていると思う。

 以前、ピエール瀧をよく起用する監督やディレクターに、どこに惹かれるのか訊いたことがある。「顔」「姿形」「そこにいる感じ」みたいな答えが圧倒的多数だった。要は見た目ってことですね。あのフォルム、あの存在感がほかにいない、だから使いたくなる、という。

 ハマケンもそうなのではないか。もちろん、ちゃんと芝居できる、うまい、という基本的なクオリティはあるとしても、そこに乗っかるプラスアルファとして、あの顔、あのフォルム、あの存在感は、ものすごく大きいのではないか。別の役者が、白馬に乗って「牧善之介です」と言った時を思い浮かべていただきたい。どうでしょう。ハマケンよりハマる人、いるでしょうか。いませんよね。福子(安藤サクラ)と萬平(長谷川博己)の結婚式の集合写真を撮る時に、カメラマンに「そこの男性立ってください」と言われ、「立ってます!」と返すというシーンもあった。あんなシンプルなギャグがおもしろくなるのも、ハマケンならではだろう。

 イントロや間奏で、ハマケンがビシビシ踊りまくって、開脚とかの大技を出して、そのたびにお客さんみんな「キャーッ!」て盛り上がるの、在日ファンクのライブにおける大きな魅力だが、あれ、ハマケンだからあんなに「おもしろかっこいい」のだ、ということは、生で観たことのある人なら同意してくれるだろう。スラッとした男前があれやってたって、かっこいいけどおもしろくないでしょ? というのと、根本は同じなのではないかと思う、俳優浜野謙太の魅力は。生まれつきの容姿はもちろん、それプラス、表情とか立ち方とか動き方などに、人の目を惹きつけるものがあるかどうか、「こいつ使いたい!」と思わせるものがあるかどうか。言い換えれば、そこからすでに表現になっているかどうかだ。で、なっているから、ハマケンはあんなに重宝されるんだな、と思うのだ。


 たとえば、それこそ北野武監督なんて、ほとんど俳優の見た目しか気にしてないんじゃないか、と、映画を観ていて思うこともあるし。あ、そういえば北野映画はまだですね、ハマケン。起用されないかな。

 最後に。今、ここまで書いて、読み直して、「NHKしか観てないのかよ!」 とも言われそうだな、と気がついた。そんなことありません。わかりやすいのでそこにしぼって書きましたが、2014年の映画『ジャッジ!』で演じた、ちくわ会社のバカ息子役とかまで観ているし、さっき挙げた舞台『夜更かしの女たち』だって、ハマケン目当てでチケットを買いました。ファンなんじゃねえか、じゃあ。

■兵庫慎司
1968年生まれ。音楽などのライター。「リアルサウンド」「CINRA NET.」「DI:GA online」「ROCKIN’ON JAPAN」「週刊SPA!」「CREA」「KAMINOGE」などに寄稿中。フラワーカンパニーズとの共著『消えぞこない メンバーチェンジなし! 活動休止なし! ヒット曲なし! のバンドが結成26年で日本武道館ワンマンにたどりつく話』(リットーミュージック)が発売中。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『まんぷく』
10月1日(月)〜2019年3月30日(土)【全151回】
作:福田靖
出演:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平/桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、松坂慶子ほか
語り:芦田愛菜
制作統括:真鍋斎
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/mampuku/

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