戸田恵梨香の笑顔がずっと続いてほしい 『大恋愛』が描く“いのちの限り愛する”こと

『大恋愛』が描く“いのちの限り愛する”こと

 若年性アルツハイマー病となってしまうヒロインと、それを明るく支える男の純愛物語。私たちは、そのテーマを事前に聞いて『大恋愛〜僕を忘れる君と』(TBS系)というドラマを観ている。心の準備はできていたはずなのに、やはり実際に突きつけられると心が締めつけられるものがあった。この病は、すぐそこにある危機とも言われている。もしあなたが、もしくは大切な誰かが今「若年性アルツハイマー病の前段階であるMCI(軽度認知障害)」だと診断されたら……。10月19日放送の第2話では、尚(戸田恵梨香)が、そのショッキングな事実と向き合う。

 尚の交通事故をきっかけに、MCIの疑いを持った婚約者の侑市(松岡昌宏)。脳波検査などと同時に物忘れテストを行なう。きっと多くの視聴者も尚と同じ気持ちで、このテストに挑んだのではないだろうか。何度聞いても覚えられなかったり、まだ冷蔵庫にあるのに同じものを買ってきてしまったり、物忘れは誰しもが経験している。だが、それがまさか深刻な病気のサインだなんて。そう思う尚の気持ちがリアルだからだ。


 しかし、無常にも診断は下される。若年性アルツハイマー病は、現時点で明確な治療法はない。進行を遅らせるためには、適度な運動とバランスの良い食事、そして睡眠時間の確保、という説明に「普通の人の健康法じゃない」と、つい言葉を荒げてしまう尚。

 自分がいつも患者に向けて言っている「お大事に」という言葉も、いざ自分が病に直面すると複雑な気持ちが芽生える。相手の立場を考えるとは言いつつも、やはり実際にそうなるのとは大きく異なるのだと、戸田の静かな演技から伝わってくる。

 合理的な理由から結婚することにした尚と侑市は、実に合理的な理由でその婚約を解消した。婚約者から医師と患者へ。尚のなかで「侑市さん」から「先生」へと、呼び名が変わったことで、距離が変わったことが伺える。

 愛する真司(ムロツヨシ)には、侑市と結婚するとウソをついて別れを切り出す。悪役になることで、真司の傷が少しでも早く癒えるように。そして、真司をよく思っていない母親(草刈民代)には「大丈夫、別れてきた」となんでもない振りを見せて、部屋でひとりくしゃくしゃになって泣く。その人前で気丈に振る舞う姿から感じられるのは、尚という女性の本質的な強さ、そして凛とした気高さだ。きっと、尚のそんなところに真司は惚れたのだ。自分の小説を暗唱してくれる記憶力があるからでも、女医というステータスのある職業だからでもない。もちろん、スレンダーな見た目はタイプではあったようだが、それはひとつのきっかけにしかすぎない。

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