『ここは退屈迎えに来て』インタビュー
橋本愛が語る、『告白』と上京当時の思い出 「日活撮影所に行くと胃が痛くなってしまって」
ーーでも結構女の子あるあるな気がします。他人に言われてようやく嬉しいみたいな。
橋本:すっごい浅はかだと思うんですけどね。でも青春って浅瀬のきらめきじゃないですか。プールも浅かったし、あれはたまたまですけど(笑)。あのシーンの浅瀬のキラキラ感が私はすごく心に残っていて、逆に大人になればなるほど、その浅さが認められなくなるし、どんどん深さを持った人から評価されていきますよね。その浅さが許されたときの輝きというのは、戻ってこないものだから、無鉄砲に楽しんでいるプールのシーンは美しくて痛いものだなと思っています。
ーー確かにそうですね。そういえば制服、久しぶりだったのではないでしょうか?
橋本:めちゃくちゃ久しぶりでした。そわそわしました(笑)。実際に短いスカートを履いて、制服で街を歩いたことがないので、演じてみて気が知れなかったですね。高校時代は制服を買わなかったので、持っていなかったんです。それに中学時代は、こだわりがなかったので、学年で1番スカートが長く、売っている見本の通り着ていました。背が伸びると自然とスカートの丈が短くなって、先生から怒られたのですが、「これそうなんだ?」と違反している自覚はなかったですね。みんなは可愛くしようとして短くするんですけど、私の場合は成長でした(笑)。
ーー橋本さんにとって高校時代はどんな印象でしたか?
橋本:高校時代は、わたしにとってフィールドが学校というよりは、こっちの現場だったので、学生生活というものがそんなに自分には根付いていません。こういう映画をやるときにいわゆる“キラキラした青春”を思い描くときは、全部中学校の思い出なんです。中学校のときは仕事を始めてはいたけれど、まだフィールドとしては学校が土台にあって、ちゃんと無鉄砲に楽しめていたので。今でもそれ以降の根付いている友人って全員中学生の頃の同級生で、夢にもその人たち以外出てこないんです。だから、高校も大学も充実している人って夢の中色んな人出てくるんじゃないかと思ったりします(笑)。
ーー今でも熊本の夢を見るんですか?
橋本:めちゃくちゃ見ます。授業受けたり、体育をしたり……。基本がノスタルジーな人間なので、あんまり良くないんですけれど、過去をさかのぼって、思い出しがちなんです。
ーーわたしは自分の声の録音を聞くのが嫌なくらい、1秒前が黒歴史です。
橋本:それは一緒ですよ(笑)。映画とか試写会とかあっても、できれば見たくないですし、録音してあとで聞こうとやっても再生ボタン押せないですね。自分の声を好きになるのって大事ですね。
ーーそれでは、本作のように過去を見つめることは好きなのですね。
橋本:そういう意味で、過去を振り返るというのはすごくやってしまいます。地元に帰った時も小学校の周りの道を歩いて、昔祭をやっていた神社を探してみたり。でも意外と見つからないんですよね。ここじゃなかったんだって、思い出せないことに悲しくなります。でも逆に、あの頃には知らなかった面白い景色や建物を見つけることもできます。なので、帰省したときは、昔の記憶と新しい発見が混ざった散歩をしています。
ーー逆に後悔は……?
橋本:やっぱり制服を買っておけばよかったと思います(笑)。あの時は学校というものに重きを置かないだろうと思っていたので、制服も高いし買わなくていいかなと思っていたんですけど、東京の街をブレザーで歩いてみたかったっていうのはあります。熊本で生まれ育って、熊本での学校生活がほとんどだから、東京で中学校の制服とかを見ると、ぎょっとしますし、この地で育つ人がいるんだって驚きます。「学生時代にここ来たわ」と言われたら驚くし、「渋谷区の保育園行ってた」と言われると「え〜!」みたいな。