SKE48卒業から3年 『まんぷく』松井玲奈が女優として成功できた理由を考える

松井玲奈が女優として成功できた理由

 また『荒川アンダーザブリッジ』や数多くの演劇を手掛ける飯塚健が監督・脚本を務めた『神奈川県厚木市 ランドリー茅ヶ崎』(MBS・TBS系)で連ドラ初主演を務める。松井は髪を短くしジャージ姿のバイト店員に扮したのだが、そこで見せた変わり者のオーナーや一癖ある客たちとの掛け合いは、実に痛快だった。

 『ニーチェ先生』『ランドリー茅ヶ崎』は松井にとって、それぞれ狂気と脱力系の笑いというコメディエンヌとしての才能を開花させた重要な2作品となった。今振り返ると、視聴者の見る目が厳しく、キャラが固定されかねない朝ドラなどではなく、評価の高い演出家の深夜ドラマで着々とキャリアを積みあげていったのは正解だったように思う。

 コメディエンヌとしての松井は、主に深夜ドラマや映画で知る人ぞ知る一面だっただけに、今年に入って話題になった月9ドラマ『海月姫』(フジテレビ系)での、アフロヘアの鉄道オタク“ばんばさん”役で、期待以上の声が多かったのも当然の結果だと言える。松井の演技を知る人にとっては、女優になって清楚なキャラを崩すような演技をしてきた松井が、この作品では逆に顔を隠し、最大の武器として美貌を晒すという、ある意味逆転の発想だったのが面白く感じられた。

 そして、松井が遠回りしてたどり着いた朝ドラ『まんぷく』では、日清食品を創業する安藤百福の妻をモデルにした主人公・今井福子(安藤サクラ)の学生時代の親友・鹿野敏子役に。主にドラマの息抜きパートとも言える福子とのガールズトークシーンで登場する。ラーメンを福子に紹介したのも敏子で、今後もドラマを和やかにする活躍が期待されるだろう。

 一方『ブラックスキャンダル』は、スキャンダルを捏造された元女優が整形し、芸能マネージャーとなり復讐する物語で、松井はそのマネージャーの復讐に協力する売れっ子のトップ女優という役どころ。本当に味方なのか、もしくは黒幕なのか、まだ素性が計り知れないミステリアスな役は、様々な役を演じてきた松井なだけに、展開が全く予想がつかない。

 今のアイドル界は卒業や解散のラッシュが続き、女優を目指す人も多いと思われるが、アイドルはその後の活躍に関して厳しい現実が待っている印象だ。松井は女優になることへの信念を曲げず、アイドル時代を否定することなく、そのキャリアを武器にしていることが成功に繋がっている。何年間も舞台女優を経験していたかのような錯覚さえ覚えるほど、この3年という短い期間に女優として新たな一面をいくつも見せ、自分のものにしてきた松井は、後輩たちの良いお手本になるような女優に成長したと言える。

(文=本 手)

■放送情報
NHK連続テレビ小説『まんぷく』
10月1日(月)〜2019年3月30日(土)【全151回】
作:福田靖
出演:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平/桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、松坂慶子ほか
語り:芦田愛菜
制作統括:真鍋斎
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/mampuku/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる