織田裕二、“男性主役ドラマ”の礎を築いた過去を語る「絶対に勝たなきゃいけないと思った」

織田裕二、“男性主役ドラマ”を語る

「当時は『男性主役はダメと言われて終わっちゃうのかな』と思っていた」

ーー甲斐正午は、勝つためなら何でもやるという傲慢な人物ですが、演じてみていかがですか?

織田:やっぱり傲慢に映りますかね(苦笑)。僕、原作のハーヴィーを見てて傲慢だと思ったことが一度もないんですよ。むしろ僕が弁護士を頼むなら、こういう人にお願いしたいと思うぐらい。原作には、ハーヴィーがマスタングを借りて出て行くシーンがあって、マイクがちょっとでも遅刻したらもう置いていっちゃう。これもひとつの教えですよね。時間に遅れるなんてもってのほかだよという。言わんとしてることは実はベーシックで、新人に対して「時間に遅れたら行っちゃうよ」ということが、かっこよく撮られている。むしろ、ハーヴィーは優しいと思いますよ。実は面倒見がいいというか。僕らが芝居の世界に入ってもそうでした。先輩役者の方たちとお芝居させてもらう中で、教えてくれた人なんてほとんどいませんよ。芝居は正解がないものだから。一度だけ、山崎努さんが教えてくれましたが、役者を30年やっていて、それ以外に教えてもらった経験はないと思います。山崎さんも一言だけぽろっと「私はこう思った。こういう考え方もあるかな」っておっしゃってくれました。その時はもう撮影が終わっていたので、直せなくて「しまった、そのやり方のほうがよかった」と後から悔しい思いをしましたね。

ーー先日『東京ラブストーリー』が再放送されていましたが、織田さんにとって、やはり月9には特別な思いがありますか?

織田:僕が初めてやった月9が『東京ラブストーリー』だったんです。当時、僕は連ドラをほとんどやったことがありませんでした。当時は、若い男が主役のドラマがなく、もっとキラキラした作風で、女性が主役でした。もちろん例外もありますが、男が主役のドラマなんて「は?」って言われる時代で。「ドラマを観てるのはF1層の女の子なんだから、女の子が主役で当然でしょ」と言われちゃう。「いやいや『探偵物語』(松田優作主演)は男性主役でしたよね」って僕が言うと、「視聴率取れなかったから」って一言言われて。「でも記憶には残ってるじゃないですか、いいドラマじゃないですか」って一生懸命言っても響かなかったんですよね。でも、僕がそう言ったことが、誰かの心に引っかかってたんでしょう。「男性主役の話をやりませんか?」と言ってくれる人が違う局にいて、そこに飛び込んだのですが、結果的にあまり上手くいかなかった。当時は「男性主役はやっぱりダメだと言われて終わっちゃうのかな」と思っていました。僕は「どうしてラブストーリーなんですか?」っていつも言ってたんです。「ドラマは女の子が観てるというけど、男だって観たいんですよ」と。女の子も仕事をはじめて、社会の向きも男女対等に変わっていっている。「仕事をしてる女の子は『私たちだってあんなに恋愛ばかりじゃないよ』と思ってるんじゃないですか? 仕事を一生懸命やろうとしてる女の子もいるんじゃないですか?」と。そんなことを言ってたら、もう1回フジテレビさんで、月9ではないけど『振り返れば奴がいる』という医者のドラマに呼ばれました。僕も、これを外したら男主役はなくなってしまうのではないかと危機感を背負ってて。絶対勝とうと思いました。

ーー織田さんが男性主役のドラマを切り開いたと。

織田:いや、自分がやったわけではないですよ。ただ、それしかなかったんです。やらないとまた、「男主役のドラマはなし、ほれ見ろ言わんこっちゃない」と言われるのは嫌だったから。これは絶対に勝たなきゃいけないと思って挑みました。

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