「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『クレイジー・リッチ!』
個人的に一番ツボだったのが、レイチェルの親友ペク・リンを演じるオークワフィナ。『オーシャンズ8』でもとにかく手癖の悪いスリ師を演じていたオークワフィナは、中国系アメリカ人の父親と韓国系移民の母親を持ち、ラッパーとしても様々なバズを起こしてきました。ペク・リンは“庶民”であるレイチェルを、大富豪の娘たちに見劣りしないよう美しくしようと、家のクローゼットからありとあらゆる衣装を取り出し、レイチェルに一番似合うドレスを見立てます。2人はまさにソウルメイト。その優しい友情は涙を誘うものがあります。オークワフィナは最近カナダの『2018 iHeartRadio Much Music Video Awards』の司会を務め、初めてアジア系の女優が北米のアワードのホストを務めるという快挙を成し遂げました。今後、ハリウッド映画ではさらなる活躍が見られる予感がします。
そして、本作の中でもっとも有名なのは、ニックの母親エレノアを演じる中国系マレーシア人、ミシェル・ヨーでしょう。『ポリス・ストーリー3』や『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』『グリーン・デスティニー』など、とにかくアクションがとんでもない、香港映画界が世界に誇る女優です。こんな女性が姑だったら……と思うと、逆に闘志が湧いてくるような気もします。
本作の中では、様々なアジアンカルチャーが見てとれます。それは、作品の核となる“家族観”や“人生観”にも繋がってくるのですが、豪勢なシンガポールの街並みや煌びやかなファッション、幻想的な結婚式、そしてレイチェルとエレノアが対決する麻雀など、ありとあらゆるシーンに盛りだくさんなのです。個人的には麻雀シーンの深読みが止まりません。詳しくは辰巳JUNKさんがこちらの記事で考察しているのですが、麻雀好きな人にもぜひ観てほしいです。麻雀は中国発祥のテーブルゲーム、牌ひとつずつに深い意味があります。麻雀のシーンは、そこから2人の関係性や作品のテーマが浮かび上がる、緻密に練られた勝負なのです。
映画に限らず、音楽も含めたカルチャーの世界では、アジア系の才能が、アメリカのエンターテインメント界に革新的な出来事を起こすことが、近年続いてるように思います。『クレイジー・リッチ!』は、そういった意味でも現代的で画期的な作品であり、同時に娯楽作品としても熱狂できる作品。「Yellow」の流れるラストシーンを観ながら、私はこれは自分のための映画だと思いました。すでに続編製作の噂もありますが、この機会にぜひ多くの人に劇場に足を運んでもらいたい一作です。
■公開情報
『クレイジー・リッチ!』
公開中
監督:ジョン・M・チュウ
原作:ケビン・クワン著『クレイジー・リッチ・アジアンズ』(竹書房)
出演:コンスタンス・ウー、ヘンリー・ゴールディング、ミシェル・ヨー、オークワフィナ、ソノヤ・ミズノほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
2018年/アメリカ/カラー/シネマスコープ/英語/121分/原題:Crazy Rich Asians
(c)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND SK GLOBAL ENTERTAINMENT