『半分、青い。』風吹ジュンから『まんぷく』芦田愛菜へ 朝ドラのナレーションが果たす特殊な役割

 また、朝ドラには「女性の一代記」モノが多いだけに、ちょっと意外かもしれないが、ヒロイン自身がナレーションを担当するケースは、ごくわずか。

 近年では『あまちゃん』の能年玲奈、宮本信子、小泉今日子の3世代があったほか、『純と愛』の夏菜、かなり遡って『てるてる家族』の石原さとみ、『オードリー』の岡本綾など。そして、忘れてはならないのが、ヒロインの成長・加齢とともに役者が交代していった『カーネーション』だ。ヒロインの交代とともに二宮星、尾野真千子、夏木マリへとナレーションも引き継がれていった。しかも、ヒロイン自身が亡くなった後に、ごく普通の口調で言うナレーションの「おはようございます。死にました」には盛大に泣き笑いさせられたのは、今も忘れられない。

 「人間でないナレーション」という謎設定もときどき登場する。前述の『ごちそうさん』のトラは、死後、「ぬか床」としてナレーションを担当。また、『まれ』のナレーションは「魔女姫人形」というキャラ(戸田恵子)だった。

 この「魔女姫人形」のキンキン声や、締め言葉「ごきげんよう」でおなじみの『花子とアン』の美輪明宏など、強烈な個性を放つナレーションの場合、ときに「うるさい」「話に集中できない」という批判を浴びることもある。半年間毎日耳にすること、朝という時間帯ということもあり、クセがなく落ち着いたトーンのベテラン女優やNHKアナウンサーがナレーションを担当するほうが全般に好評だというのも、朝ドラの一つの特徴だろう。

 そもそも朝ドラは、新聞小説やラジオドラマなどをヒントにして誕生したもの。初期は文学性のあるナレーションを中心に据えるスタイルだった。そうした経緯を考えても、「忙しい時間帯に、耳で聞いてわかる」ことは朝ドラが大切にしてきた要素の一つでもあるのだ。

 さて、ここで大いに期待されるのが、『まんぷく』のナレーション・芦田だ。制作統括の真鍋斎氏は、その人選の狙いについて「一人の少女が、おばあちゃんから聞いた話を友達に話して聞かせているというような設定」と語っている。その点、芦田は幅広い世代に親しまれているし、滑舌の良さ、言葉の聞き取りやすさも文句なし。さらに、純粋さや清潔感、「個」を強調せず作品に溶け込む聡明さもある。

 安藤サクラと長谷川博己という、濃厚な演技を見せる実力派メインキャストの物語の語り手として、実に良いバランスなのではないだろうか。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『半分、青い。』
平成30年4月2日(月)~9月29日(土)<全156回(予定)>
作:北川悦吏子
出演:永野芽郁、松雪泰子、滝藤賢一/佐藤健、原田知世、谷原章介/余貴美子、風吹ジュン、中村雅俊/豊川悦司、井川遥、清野菜名、志尊淳、中村倫也、古畑星夏
制作統括:勝田夏子
プロデューサー:松園武大
演出:田中健二、土井祥平、橋爪紳一朗ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/

NHK連続テレビ小説『まんぷく』
10月1日(月)〜2019年3月30日(土)【全151回】
作:福田靖
出演:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平/桐谷健太、片岡愛之助、松坂慶子/菅田将暉、メイナード・プラント(MONKEY MAJIK)、ブレイズ・プラント(MONKEY MAJIK)、岡崎体育ほか
語り:芦田愛菜
制作統括:真鍋斎
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/mampuku/

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