『義母と娘のブルース』感謝せずにはいられないフィナーレに “愛”に溢れたドラマの軌跡を振り返る

『義母と娘のブルース』は愛に溢れたドラマに

親はずっと親だけど、形は変わってく

 みゆきが、過労で倒れた亜希子の髪に白髪が混ざっていることに気づいたように、子はいつか必ず親の老いに直面する。どんなにハツラツとした人であっても、どんな偉業を成し遂げた人でも、人は必ず最期のときを迎えるのだ。親のその日を意識したときが、子ども業の卒業といえるのかもしれない。親の役割も子の成長に合わせて、亜希子のように背中を見せて奮闘するフェーズから、章の父のようにそっと影から応援するフェーズへと変化していく。親が子の可能性を広げたいと願っていた関係性は、いつしか子が親の限りある人生をより豊かにしたいと願う間柄になっていくのだ。

 麦田親子のように血のつながった親子であれば、それが当たり前だと感じている部分も、義母と娘だからこそ様々な変化に正面からぶつかり、一つひとつ言語化して整理していく。そのたびに、亜希子とみゆきは実の親子以上に、親子らしくなっていく。この先もきっと……。とかく、この世は孤独と悲しみが渦巻くブルースな世界。誰かと出会えば別れがやってくる。始まりがあれば、終わりがくるものだ。現実でも、2018年はたくさんの別れがあった。レジェンドと呼ばれる人たちが次々と旅立ち、国民的アニメの原作者もこの世を去った。歌姫が引退し、“平成最後の夏”という言葉も多く飛び交った。一つの時代が終わりを迎え、何かが変わってしまうような焦燥感に包まれる。そんなブルースが似合う2018年にこそ、ジャパニーズクラシカルでクスッとさせてくれるポップな『義母と娘のブルース』が私たちの心を救ったのだ。

 “歴史を見れば自分の苦悩など小さく見える”という『おんな城主 直虎』(NHK総合)を手がけた森下佳子脚本だからこそ聞けた粋なセリフにも、1本の軸を感じる。それは、現代であっても、戦国時代であっても、そして未来であっても……時代が変われば、様々な家族の形が生まれてくる。しかし、どんなに形が変わったとしても、人が人を愛することは変わらず温かいということ。当たり前になってしまっていた、親子って、家族って、恋って、いいもんだ。そんなことを改めて気づかせてくれる、ひだまりのようなドラマだった。この先のストーリーは、私たち自身に託されたのだろう。切符に刻まれた1234……と並ぶ数字、GBMS(ぎぼむす)と読めるローマ字のように、今この瞬間にも私たちの周りには小さな奇跡が起きているかもしれない。そのワクワクを忘れずに、いつどうなるかわからない人生を、共に生き思いきり楽しもうではないか。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
火曜ドラマ『義母と娘のブルース』
出演:綾瀬はるか、竹野内豊、佐藤健、横溝菜帆、川村陽介、橋本真実、真凛、奥山佳恵、浅利陽介、浅野和之、麻生祐未
原作:『義母と娘のブルース』(ぶんか社刊)桜沢鈴
脚本:森下佳子
プロデュース:飯田和孝、大形美佑葵
演出:平川雄一朗、中前勇児
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/gibomusu_blues/

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