佐藤龍我、ドラマ初出演とは思えない存在感! 『ゼロ 一獲千金ゲーム』での演技の凄み

佐藤龍我、真意を隠し続けた演技の凄み

 とはいえ、標が冷酷な人間ではないということも佐藤は自身の演技をもって伝えている。思えば第5話で人間柱時計にされた標は、組むことになったスナオ(杉野遥亮)に対して「1番馬鹿そうだから選んだ」と言っていた。馬鹿そうだと言ったことを「あれはほめ言葉だから」と伝えた標は、スナオに救出されたとき「やっぱり君を選んで正解だった」と呟く。第9話で「信用できない相手は利用するしかない」と言った標だが、スナオに対しては、彼の“素直さ”を買ってチームを組んでいたことが推察できる。佐藤は決して標の感情を表情で表そうとはしない。しかし言葉少なな標の台詞に、彼の感情をひそかに込めることで、彼が必ずしも他人を突き放しているわけではないことを表している。在全を倒すという野望を必ず達成するため、その目的が邪魔されることがないよう、人を信用してこなかっただけなのだ。

 そんな標は、心の奥底で「信用できる大人」を求めていたことを零に指摘される。執拗に膝を掻いていた指にぐっと力が入ったとき、はじめて標に幼さが感じられた。

 ドラマ終盤、零は「ブレークダウン」で標に勝利する。しかし標が負けたわけではないことは視聴者にも伝わる。ゲームを鑑賞していたセイギ(間宮祥太朗)が勘づいたが、「信用できる大人」を心の奥底で求めていた標は、零に自身の手の内を明かし続けることで、彼が自分の言葉を信用するかどうか見極めていたのだ。零の勝利が決まったとき、標は初めてその顔に笑みを浮かべる。予告編では零への勝利を確信した不敵な笑みのように見えたのだが、実際にはようやく出会えた「信用できる大人」に対して浮かべた安堵の表情だった。第9話で標が背負い続けてきた覚悟が明かされるまで、彼の真意がわからないように笑みを浮かべた佐藤の深い演技に脱帽する。ゲームに敗北した標は、去り際「またいつか会いましょう」と零に声をかけて会場を立ち去る。その背中に、第1話から背負い続けてきた覚悟は見えなかった。

 最終話に再び標が登場するかどうかは不明だが、標が『ゼロ 一獲千金ゲーム』になくてはならない存在だったのは事実である。佐藤は9名のジャニーズJr.によるオーディションで標役を勝ち取った。今作がドラマ初出演とは思えないほどの存在感を発揮した彼は、今後どのような役を演じるのだろうか。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
『ゼロ 一獲千金ゲーム』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30〜
出演:加藤シゲアキ(NEWS)、間宮祥太朗、小関裕太、加藤諒、岡山天音、杉野遥亮、佐藤龍我(東京B少年/ジャニーズJr.)、ケンドーコバヤシ、梅沢富美男、小池栄子
原作:福本伸行
脚本:小原信治
演出:丸谷俊平
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:櫨山裕子、秋元孝之
制作協力:オフィスクレッシェンド
(c)日本テレビ
公式サイト:http://www.ntv.co.jp/0/

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