明らかに何かが変? 『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』の隠された魅力を徹底解説
第1作より22年、6作目となった人気シリーズの新作『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』は、トム・クルーズ自身が生身で演じる、これまで以上のエクストリームなアクションが話題になっている。50代も半ばを過ぎたトムだが、年を追うごとに撮影の危険度は逆に増しているというのが驚きである。
「HALO(ヘイロー)ジャンプ」(高高度降下 低高度開傘)と呼ばれる作戦シーンを撮るため、成層圏ギリギリの高さ(約8000メートル)から酸素マスクをつけての超高速スカイダイビングを、トムは撮影のために100回以上も繰り返したというから唖然としてしまう。また、ビルからビルへ飛び移るシーンでは足を骨折し入院、ヘルメットを付けずにバイクを駆り市街をハイスピードですり抜けたり、手がかじかむ極寒の山岳地帯を飛ぶヘリコプターに、実際にしがみついて落下してみたり、自らヘリを操縦し、墜落寸前の危険な飛行を行うなど、常軌を逸する狂気じみたアクションを繰り返している。
だが本作を見て感じるのは、そのようなアクションから与えられる高揚感だけではないはずだ。この映画には、それだけでは説明がつかない、異様な魅力が背後に存在している。暗すぎる画面、不自然な演出…明らかに何かが変なのである。いったいそれは何なのだろうか。そんな本作『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』の隠された魅力を解き明かすのが、ここでの目的である。じっくりとした考察になるため、通常より長文になったことを許してもらいたい。
序盤から「不可能作戦」が展開
国際的な特殊任務に従事する組織IMF(インポッシブル・ミッション・フォース)のエージェント、イーサン・ハントと、彼のチームに今回下された任務は、ロシアから盗まれ闇の市場へと流れた3つのプルトニウムの回収である。前作に登場した、ならず者スパイ集団「シンジケート」の残党「神の使徒」にプルトニウムを奪われれば、大規模な爆破テロが起きてしまうだろう。アメリカ政府の捜査線上に浮かんだのは、「ジョン・ラーク」という謎の人物だった。彼が武器商人「ホワイト・ウィドウ」とパリで接触するという情報により、急遽イーサンが軍の基地に呼ばれる。
ラークとホワイト・ウィドウの待ち合わせる時間まで一刻の猶予もない。イーサンは軍用機に乗り、パリ上空からHALOジャンプで集合地点のグラン・パレに降下してパーティー会場へ潜入、ジョン・ラークを確保し、さらにラークのマスクを短時間で作成し、それをかぶってホワイト・ウィドウと取り引きをし、プルトニウム、もしくはその有力情報を入手しなければならない。「そんなことできるのか…?」と思わせられるが、そこがまさに「不可能作戦(ミッション:インポッシブル)」である。
おまけに今回は、CIAからの“お目付役”として、オーガスト・ウォーカー(ヘンリー・カヴィル)なる腕利きのエージェントが、ミッション中にイーサンに張り付くことになる。本作はイーサンとウォーカーとの緊迫した関係も大きな見どころとなる。果たしてウォーカー、敵か味方か…。