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明らかに何かが変? 『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』の隠された魅力を徹底解説

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トムの要望を叶えられる監督

 クリストファー・マッカリー本人の話によると、前作『ローグ・ネイション』に引き続き、本作もしっかりとした脚本がない状態で撮影をスタートしているのだという。それは、気分屋のトムが突然に新しいアクションのアイディアを次々に提案してくるためで、それに対してフレキシブルに対応しなければならないからだという。

 第1作は、ブライアン・デ・パルマ監督のサスペンス演出の手腕が充分に発揮された傑作だったが、トムの初めてのプロデュース作品ということもあり、派手な見せ場を作りたがるトムの希望を抑えるのが、かなり大変だったという。水槽を爆破してレストランから逃げるシーンでは大量の水を降らせ、そのときに鳴る劇伴(音楽)にも、もっとトランペットの音を大きくするようにと、トムは指示していた。

 2作目は、ジョン・ウー監督へとバトンタッチされたが、やはりウー監督も、トムが無謀なロック・クライミングをするシーンの撮影では、生きた心地がしなかったそうだ。だがウー監督は、トムの要求する派手なアイディアを支持もしていた珍しい監督でもあった。イーサンが爆風とともにビルの窓から飛び出して、手前に向かって飛び出して来る絵コンテを作らせたりもして、他のスタッフに「これではスーパーマンになってしまう」と説得されるなど、トムの荒唐無稽な思いつきを凌駕するアイディアを出した唯一の監督だといえよう。

 そのため『M:I-2』は、トムの希望を最大限に押し出した、異常にナルシスティックな作品になってしまった。個人的には第1作に次ぐ傑作だと思うが、原作の『スパイ大作戦』とは、あまりにも異なるものになってしまったことは否めない。その後シリーズはチームワークを重視するスタイルに一部回帰していくが、俳優トム・クルーズのプロモーションとしての意味合いはそのまま残っている。本シリーズは、「今度一緒に『トム・クルーズ6』を観に行かない?」と言っても、「ああ、『フォールアウト』のことか」と、何となく通じるような性質のものになってしまったのだ。

 難しいのは、トムがプロデューサーとして要求してくるアクション・シーンをさばききったうえで、シリーズにとっても、映画としても意義のあるものに昇華できるのかという部分である。そこで都合の良いのが、クリストファー・マッカリー監督だったのだ。彼は脚本を単独で書ける腕があるため、すぐにでも脚本変更に対応しつつ、新たなロジックを構築し、さらにそれに合わせて演出プランを変更することが可能というわけだ。つまり要望があれば、彼一人に話を通せば良いのだ。だからトムはマッカリーを手放せなかったのだろう。

前作『ローグ・ネイション』とは異なった作風

 だがマッカリー監督も、制約の中で自分のやりたいことを通していくことを忘れていない。『ローグ・ネイション』ではクラシック映画へのあこがれを作品につめ込んだが、本作ではそれに加え、現代的な構成に挑戦している。それはアクションを含めて、従来とは異なる、アクションとドラマ部分を同じように撮影し、全編を並列的に、流れるように撮っていくという手法である。そのため、撮影監督を含めてスタッフを刷新したという。

 アクションの見せ場が多すぎるということで、削った部分も多い。例えば、グラン・パレのパーティー会場の屋根からイーサンがぶら下がり、ダンスする群衆のなかに落下しそうになってしまう描写が存在していたはずだが、最終的にカットされている。“お約束”の宙づりシーンではあるが、これを残していたとしたら、むしろ凡庸な印象を与えていたかもしれない。

 代わりに引き立っているのが、そこに続くトイレのシーンだ。暗闇のなかから白い空間に入る瞬間、画家クロード・モネの光の処理のように、ざらついた質感の荒い粒子が、画面いっぱいに広がっていく。それは精細な美しさを持つ画面よりも、なぜか観客の心をざわめかせてくれる。その後、ホワイトウィドウの邸宅に到着するシーンでも、その映像的な魅力が妖しく光っている。しかし、これらのように暗い場所で照明を多用せず、一部でコントロールを放棄し、偶然性を呼び込むような撮影というのは通常、本作のような大作では行われ得ないものである。

 『ローグ・ネイション』も暗い雰囲気のある作品だったが、本作はもっとダークで内面的な印象がある。それは、イーサン・ハントが何度か見る、予知的な悪夢や、惨劇のイメージに代表されている。そういう作風に呼応した音楽も、基本はオーケストラによって奏でられているものの、部分的に暗い旋律が、内省的なエレクトロニック・サウンドと交わっていく。そのあたりが、テーマ曲を中心としてトゥーランドットなどの要素を分かりやすく乗せていた、ひたすらクラシカル志向の前作とは異なるところだ。

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