山崎賢人が食べる“おにぎり”の演出にも注目 『グッド・ドクター』はたくさんの愛を与えていく

『グッド・ドクター』“おにぎり”の演出に注目

 毎週涙が止まらないドラマ『グッド・ドクター』(フジテレビ系)は斬新な医療ドラマだ。自閉症スペクトラム障害でサヴァン症候群という異色の主人公は「見る」力に特化した研修医であり、その力は患者及び周囲の心と体を救い、何かを変えることさえできるのではないかと思わせるほど強大だ。

 韓国ドラマ『グッド・ドクター』(KBS、パク・ジェボム主演)が原作であり、『海月姫』『刑事ゆがみ』の徳永友一が脚本、プロデュースは『好きな人がいること』の藤野良太、同じく『好きな人がいること』『コンフィデンスマンJP』(いずれもフジテレビ系)の金井紘が演出を手がけている。

 構造としては、敵・味方がはっきりしたドラマだと言える。いかにも悪いオーラを醸し出し、常に何かしら悪巧みしてほくそ笑んでいる板尾創路演じる副院長と、それにつき従う、根は悪くなさそうだが出世と保身命の小児外科長、戸次重幸演じる間宮。優しく、何があっても山崎賢人演じる主人公・湊を守ろうとする柄本明演じる院長は、常に副院長に失脚を画策されており、藤木直人演じる敏腕小児外科医・高山には、立場上複雑な関係性になりつつある恋人であり病院理事長の、中村ゆり演じる美智がいる。

 浜野謙太演じる看護師の橋口は初回から湊の味方であり、マスコット的存在だ。そして、上野樹里演じる瀬戸夏美は湊を姉のように見守る存在でもあるが、それ以上に、病院のシステムに染まっていない若手医師である彼女が、様々な問題に直面し、湊の純粋な視点に触れることで迷い、正しくあろう、患者にとって最善の道をとろうと葛藤し、前に進む姿は、医療ドラマとしての根幹の部分を担っていると言えるだろう。

 山崎賢人が実に見事に好演している主人公・湊は、医療ドラマにおいて珍しい「見る」という能力に長けた主人公だ。湊は、かっこよくオペを行うこともなく、執刀を行う高山に怒られながら、震えつつ、祈るように自分の胸をトントンと叩き続けている。だが、1人傍観者として現場を必死で見続ける彼の画像診断、症状の観察によって、彼はいざという時に子供の命を救う。さらには、親子が気づけない、互いを思った行動を理解し、最良の道を示し、小さな母親に時間を与え、亡くなった子供のバラバラになった生の痕跡をゴミ箱からかき集め、修復し母親の心を救う。我慢しすぎて潰れかけた子供の本音を引き出す。

 優れた把握能力を持つとともに、子供たちと同じ視線を持った湊の前に立ちふさがるのは、「コンプライアンス」「ルール」「責任の所在」といった大人たちの言葉だ。規則やルール、偏見、相手を想うあまりの配慮と我慢にがんじがらめになり、本当のことが見えなくなっている人々に、彼はいつもストレートに訴えかける。「どうして本当のことを言っちゃだめなんですか」と。彼の言葉に、そんな簡単なことさえ難しいと思ってしまう社会のあり方と私たちの考え方さえも正されるような気がする。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる