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松本穂香と二階堂ふみ、対極の存在が物語の軸に? ドラマ版『この世界の片隅に』の狙いを読む

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 原作・アニメ版の人攫いは、すずの機転によって撃退される。彼女は得意の工作で人攫いの化け物がたちまち眠ってしまう“夜”を昼間に作り出したからだ。一方、ドラマ版の人攫いは、すずの言葉に背中を押された周作の機転によって撃退される。彼の場合、“夜”を作るのではなく、2人が閉じ込められた暗い空間から光のほうへと、彼らを外界から隔てている壁を足で蹴破り、幼い2人は手をとって逃げるのである。

 このあからさまに逆の設定は何を示しているのか。原作・アニメ版のすずよりも松本穂香版のすずのほうがより不器用なキャラクターとして描かれているという、そもそものキャラクター設定の違いもあるだろう。広島に一時帰省したときに、人攫いにあった場所で周作とどこで会ったのかを思い出し、周作に会うために広島を駆け抜けるすずに、過去の手に手をとって走る幼少期のすずと周作が重なるという第2話の山場のためにあるとも言ってもいい。だが、なによりこの昼間の“夜”を表現する原作・アニメ版と、逆に昼間の“夜”から光のほうへと現状を蹴破り、脱出するドラマ版の違いは、特筆すべきである。

 第3話で物語の中心になったのは、すいかとアイスクリームだった。原作・アニメ版では登場人物たちの思い出の中、すずは想像力で補完するしかなかった「甘うて冷ようてうえはーがついとる」アイスクリームが、現実のものとして登場し、原作・アニメ版とは少し異なるすずが描いたすいかの絵を、遊女・リン(二階堂ふみ)が暗い自分の部屋の壁に貼り、鏡で光を作り、照らして微笑む姿が描かれている。彼女たちにとって、もう2度と食べられるかもわからない、様々な登場人物たちの今とは違う幸せな思い出、そして彼女たち自身の最高の思い出・体験によって彩られたそれらは、2人にとって何にも変え難い宝物なのだ。

 第3話ではアニメ版で深くは描かれることのなかった周作とリンの過去の関係が仄めかされ、すずとリンの出会いと交流が描かれた。予告を見る限りでは第4話はさらにその三角関係が掘り下げられていくのだろう。テレビドラマでこれまで演じた役の中では恐らく一番のハマリ役だろう二階堂ふみの色気と儚さが実にいい。

 ドラマが深く描くのは、広くて明るい世界を自由に生きるすずと、閉ざされた暗い世界で小さな出会いを宝物のように抱きしめて生きるリンという、対極にいる2人の女性の姿であり、彼女たちから見た戦争が、このドラマの軸になっていくのかもしれない。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■放送情報
日曜劇場『この世界の片隅に』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
原作:こうの史代『この世界の片隅に』(双葉社刊『漫画アクション』連載)
脚本:岡田惠和
音楽:久石譲
演出:土井裕泰、吉田健
プロデュース:佐野亜裕美
出演:松本穂香、松坂桃李、村上虹郎、伊藤沙莉、土村芳、ドロンズ石本、久保田紗友、稲垣来泉、二階堂ふみ、榮倉奈々、古舘佑太郎、香川京子、尾野真千子、木野花、塩見三省、田口トモロヲ、仙道敦子、伊藤蘭、宮本信子
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/konoseka_tbs/

      

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