日本勢が強いファンタジア国際映画祭、今年の結果は? 映画評論家・小野寺系がレポート

ファンタジア国際映画祭を小野寺系がレポート

「ファンタジア国際映画祭」とは

 さて、目当ての「ファンタジア国際映画祭」だが、これは「モントリオール世界映画祭」と差別化されており、主にジャンル映画、B級映画などを扱う個性的な映画祭である。

賑わう映画祭会場

 チケットは指定席ではないため、会場周辺は、良い席を確保するために列ができ、監督や俳優と観客が交流するなど賑わっていた。もともとフランス系カナダ人以外に新しい移民も多いモントリオールでは、様々な人種が存在しているが、国際的な映画祭ということもあり、会場には、より多様な人種の映画好きや業界関係者が訪れる。

 アジア映画祭としてスタートした経緯から、いまもアジア映画が多く出品されることでも有名。『リング』などジャパニーズ・ホラーをいち早く上映し、北米でのブームの火付け役ともなった。第1回の最優秀作品賞に輝いたのは、湯浅政明監督のアニメ映画『マインド・ゲーム』だった。他にも園子温監督や中島哲也監督など、日本人監督の作品が最高賞を獲得している。また、海外作品では『ぼくのエリ 200歳の少女』、『息もできない』、『新感染 ファイナル・エクスプレス』などが過去に最高賞を受賞。

 2018年の日本からの出品作品は、上田慎一郎監督『カメラを止めるな!』、佐藤信介監督『BLEACH』、三木康一郎監督『旅猫レポート』などなど。なんと30作品もの日本のタイトルが出品されていて驚かされる。

日本勢が強い映画祭。2018年の受賞結果は…

 今回、最高賞である「黒馬賞(シュヴァル・ノワール・アウォード)」に輝いた長編作品は、ロマン・デュリスとオルガ・キュリレンコ主演の『Dans la brume』。突如パリを覆った、“死の霧”の脅威と闘う家族を描くSF映画だ。

 佐藤信介監督は功労賞を受賞(会場では『アイアムアヒーロー』、『いぬやしき』も上映された)。これは三池崇史監督、押井守監督に次ぐ3人目の快挙だ。

図書館には日本の漫画も多数

 モントリオールでは、この時期にちょうどコミコンも開催されていたが、図書館では、日本の作品を含むコミック、アニメ作品が多数収蔵されていたり、また市内に日本のアニメファン向けのショップが存在しているなど、ポップカルチャーへの理解が大きい。今回上映された佐藤監督の『BLEACH』は、現地のコミックファンに原作が認知されているようだった。

 最優秀アニメーション賞に輝いたのは、 石田祐康監督『ペンギン・ハイウェイ』! ちなみにファンタジア国際映画祭では、2012年より最優秀アニメーション賞の名称を、「コン・サトシ(今敏)賞 」としている。映画祭立ち上げ当初から『パーフェクトブルー』などを上映していた運営側が、2010年に亡くなった今敏監督の功績を称えてのこと。他国のアニメ監督にここまで敬意を表する映画祭は珍しいだろう。

 また、最優秀アニメーション賞は日本作品が強く、過去には片渕須直監督『マイマイ新子と千年の魔法』、窪岡俊之監督『ベルセルク 黄金時代篇III 降臨』、新海誠監督『言の葉の庭』、 横嶋俊久監督(神風動画)『COCOLORS(コカラス)』などが受賞している。

 もう一つ。今回の新人作品賞では、21歳の山中瑶子監督『あみこ』が、スペシャル・メンション(審査員特別賞)を獲得しているのにも注目だ。

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