豊川悦司、永野芽郁たちを導く“師匠”に 『半分、青い。』秋風役のブレない両面性
6月20日放送の第69話では、秋風が見せた表情が魅力的だ。漫画家としてデビューした鈴愛とユーコ。しかし連載が始まっているにも関わらず、物語のアイデアが浮かばない。特にユーコは人気が落ちていることもあいまって、漫画家としての自信を失っていく。第69話で、鈴愛は「ユーコを励ましてほしい」と売れっ子漫画家になったボクテと喫茶店で会うのだが、たまたまそこへ秋風もやってくる。かつて破門した弟子との再会にたじろぐも、秋風もボクテに「ユーコが漫画家を続けられるように手回ししてくれないか」と頼み込む。
苦手な人物との関わりを避け続けてきた秋風が、かつての弟子に頼み込む姿には感じるものがあった。鈴愛、ユーコ、ボクテにある漫画への確かな才能を信じているのだろう。
結局、ユーコは漫画家の道を歩むのを辞め、交際相手との結婚を選んだ。ユーコは秋風と対面し辞めることを告げるが、秋風の表情は穏やかだった。漫画家を続けろと説得するのではなく、ユーコ自身が下した決断を尊重する。秋風は、ユーコに漫画を諦めてほしくなかったかもしれない。しかし豊川は、秋風の本心を吐露するのではなく、真摯に弟子と向き合った秋風を尊重して演じたように見える。漫画を描き続けられなかったことを嘆くのではなく、今まで向き合ってきた漫画への熱を後悔させないよう、柔らかな表情でユーコに言葉をかける秋風の表情は、師弟愛そのものを描いていた。
『半分、青い。』公式サイトのインタビューにて、豊川は秋風について「大人であり子ども、クールでありホット、といった両面性を持っている印象を受けますね。その出し方、さじ加減が、なかなか難しいところです」と答えているが、その両面性がブレたことは決してない。イキイキと秋風を演じる豊川に、共演者も安心して演じられるに違いない。
今後、鈴愛も秋風塾を立ち去ることになるのだろう。しかし鈴愛にとっても、ユーコやボクテにとっても、秋風が“師匠”であり続けることに間違いはない。回を追うごとに、秋風演じる豊川の目が、鈴愛たちの人としての成長を見守る父親のように見えてくる。
■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『半分、青い。』
平成30年4月2日(月)~9月29日(土)<全156回(予定)>
作:北川悦吏子
出演:永野芽郁、松雪泰子、滝藤賢一/佐藤健、原田知世、谷原章介/余貴美子、風吹ジュン、中村雅俊/豊川悦司、井川遥、清野菜名、志尊淳、中村倫也、古畑星夏
制作統括:勝田夏子
プロデューサー:松園武大
演出:田中健二、土井祥平、橋爪紳一朗ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/