渡部篤郎、坂口健太郎の行く手を阻む徹底した悪役に 『シグナル』卑劣な警察の姿
第8話では、今までの事件や、劇中で解明されていなかった謎が「なぜ」こうなってしまったのかという理由が明かされる回となった。具体的な解決はしていないものの、物事が起こる「経緯」をしっかり描くことで、今まで以上に感情移入しやすい回となった印象だ。大山剛志(北村一輝)の抱えるジレンマに対して釈然としない気持ちになったり、健人の兄が背負う理不尽の重みを感じたり。各々が役を通して表現した”やり切れなさ”は、第8話の最も重要なスパイスとなった。そんな理不尽さを抱えつつも、ラストシーンでは第1話から謎とされていた大山の行方が発見されるなど、物語の進展を肌で感じられる展開となる。岩田の死で始まり、大山の死体の発見で終わる流れは、物語の展開を汲んでいて非常に綺麗な構成だったと言える。
また、関係性を描き、謎を散りばめてきた第1話から第6話に対し、第7話からは伏線回収に徹底した。さらに第8話では前回に関与した事件を深掘りする展開となり、全体を通しても非常に質の高い作りになっている。視聴者への問題提起から、起こった問題の事実を見せていく段階、そして知的好奇心に強く訴えかける解明の段階を経た構成は、後半の重要なシーンにおいて視聴者が健人と大山の抱える想いに深く入り込む手助けとなっただろう。盛り上げるべきところでしっかり視聴者の気持ちをリードできる作品の手腕を感じた。
■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter
■放送情報
『シグナル 長期未解決事件捜査班』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:坂口健太郎、北村一輝、吉瀬美智子、木村祐一、池田鉄洋、甲本雅裕、渡部篤郎
脚本:尾崎将也
演出:内片輝、鈴木浩介
音楽:林ゆうき、橘麻美
プロデューサー:萩原崇(カンテレ)、笠置高弘(カンテレ)、石田麻衣(ホリプロ)
制作著作:カンテレ
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