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“不倫をすること”が目的化されていないーー『あなたには帰る家がある』魔が差してしまう瞬間の現実味

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 『あなたには帰る家がある』(TBS系)の第1話を観て、実直に作っている作品だなと感じた。ドラマの冒頭で、玉木宏演じる夫が「よその女を抱いて」いる姿と、中谷美紀演じる妻が台所でメンチカツを揚げているところを交互に映す演出も、奇をてらっているという風には見えず、この家で起こっていることが一瞬でわかるものになっていた。その映像に重なる「これはたぶん、だいぶ時間が経った恋の話だ」という中谷のモノローグも小説的にも思える。

 そんな始まりを観て、これはさぞかし原作に忠実に作っているのだろうと思ったら、そんなことはなく、20年以上も前に書かれた原作を、現代にフィットするように作り変えているのだという。しかも、このドラマでは、100人以上の専業主婦に意見を聞いて、それを活かして作っているそうだ。こういった「誰かに聞きました」というアンケートは、ドラマではそれをどうにか生かそうとして逆に浮いてしまうこともありそうなものだが、この作品に関しては、うまくなじんでいる気がする。

 オレンジページのサイトには、本作の高成麻畝子プロデューサーと『オレンジページ』編集長・鈴木善行氏の対談が掲載されていた。高成氏は、「専業主婦のかたの本音を聞くまでに時間がかかったこと。なかなか心を開いてくれないので、お酒を飲んだりしながら(笑)、じっくり時間をかけてお話を聞きました」と語っている。単に100人の専業主婦に話を聞きましたということを、売りとして使おうとせず、ドラマに、現代のリアリティをとりこもうという姿勢がうかがえた。

 第1話の中身はてんこもりだった。内容としては、専業主婦生活を送っていた真弓(中谷美紀)が、かつて働いていた旅行代理店に再就職することになり、そこで当時との仕事の在り方の違いを実感することになったり、セクハラで困っている若い社員を助けたりもする。一方、夫の秀明(玉木宏)は、住宅販売会社での成績は芳しくなく、家事をすべて行ってくれる真弓の存在を当たり前に思っていて、その上、細かいところばかりを指摘する。夫婦の関係性は冒頭のセリフからもわかるように、冷めたものになっていた。

 真弓と秀明の前に表れるのが、ユースケ・サンタマリア演じる茄子田太郎と木村多江演じる綾子の夫婦で、教師をしている太郎の抑圧的な態度から、「幸せだけれど寂しい」と、ギリギリの状態にあった綾子と、冷めきった夫婦関係と、職場でのやるせなさを感じていた秀明が関係を持ってしまう。

 昨今は不倫ものは定期的に放送されるし、不倫もののドラマであるということが目的化されたような作品もあるが、本作においては、不倫をすることが物語において目的化されておらず、人生において、こんな風にふっと「魔がさして」しまう瞬間ってあるのではないかと思わせる展開で(もちろん、だからこそ悲劇は生まれるのだが)、そんな空気がうまく演出されていたし、役者陣が演じられていたと思う。

      

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