中谷美紀がユースケ・サンタマリアに大爆発! 『あな家』が描いた現代女性の叫び

『あな家』が描いた現代女性の叫び

 きっと、そうした思考回路を持つ太郎自身も、自らの存在を役割で認識し、その役割を全うすることに人生の意義を見出そうとしているのかもしれない。社会的にいい仕事とされる教師となり、専業主婦を養うだけの稼ぎがあるいい夫となり、両親と二世帯住居の家を立て直すいい息子となり、我が子に何不自由をさせないいい父であること。彼の言動には迷いがないのは、世の中にはいろいろな考えの人がいることなど、想像もしないからだ。役割はすでに決まっているもの。キッチンの数が家族に1つと決まっている、と言い張るように。その呪縛が、知らず知らずに視野を狭め、人望を失っていることにも気づけなくさせる。


 完成披露試写会で、太郎を怪演しているユースケ・サンタマリアは「(太郎は)人を殺してそうでしょ(笑)」とジョークを披露して笑いを誘ったが、あながち間違ってはいないかもしれない。太郎の言動は接する相手の、そして自分自身が持つ個人の自由な考え、つまり人格を殺し続けているのだから。不変的な不倫ドラマの筋書きの中に、100名の既婚女性への取材から見えてきたリアルが散りばめられている本作。第2話から見えてきたのは、社会に多くの役割を求められて疲弊する現代女性の叫び。役割は、注文住宅のように個性を活かしてカスタマイズしていくものだ。2018年の今、このドラマが描かれるのは、いつの間にか凝り固まってしまっていたそれぞれの役割を、改めて見つめ直す時期にあることを意味しているのかもしれない。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
金曜ドラマ『あなたには帰る家がある』
TBS系列にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:中谷美紀、玉木宏、ユースケ・サンタマリア、木村多江、駿河太郎、笛木優子、高橋メアリージュン、藤本敏史(FUJIWARA)、トリンドル玲奈
原作:山本文緒『あなたには帰る家がある』(角川文庫刊)
演出:平野俊一
脚本:大島里美
プロデューサー:高成麻畝子、大高さえ子
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/anaie/

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