妻夫木聡、“これまでにない演技”を見せる! キャスティング充実の『連続ドラマW イノセント・デイズ』
15年ほど前、記者会見で妻夫木聡に質問したことがある。
「妻夫木さんは『ウォーターボーイズ』以来、高校生役が続いていますが、実年齢は23歳ですよね。正直『また学ラン着るのかぁ』などと思うことはありませんか?」
周りの記者席から笑いが起きた。黒目がちの童顔でえくぼのできる笑顔が印象的な彼は、青春ドラマや漫画原作ものに引っ張りだこ。現在で言うなら山崎賢人のようなポジションの若手イケメン俳優だった。その彼が私の唐突な質問にも嫌な顔をせず、答えてくれた。
「いや、制服を着られるうちは着ておこうと思っていますね。でも最近、ヒゲが濃くなってきたから、そろそろ高校生役は無理かなぁ」
それから彼はドラマ『オレンジデイズ』(TBS系)で実年齢に近い大学生を演じ、『スローダンス』(フジテレビ系)では社会人を演じたが、それ以降は出演本数としては映画の方が増え、暴力シーンやベッドシーンにも挑んでいく。李相日監督と組み、髪を金色に染めて殺人犯役となった映画『悪人』を大きな転換点として、“いい人”のイメージを裏切るキャラクターを次々に怪演。同監督の映画『怒り』では男同士のラブシーンを演じたことは記憶に新しい。チャレンジを続けることで、アイドル的ポジションからいわゆる“大人の俳優”への脱皮を果たした成功例だと思う。
そんな妻夫木が3年半ぶりに連続ドラマに主演するのが『連続ドラマW イノセント・デイズ』。殺人犯として死刑を宣告された幼なじみの女性を救うため、ある罪の意識にさいなまされながら奔走する慎一を演じている。彼の最近の出演映画を観ていない人にとっては、このドラマの研ぎ澄まされたサスペンスフルなスタイルは衝撃的かもしれない。しかし、この新作は彼が映画『ぼくたちの家族』で出会った早見和真の原作小説をドラマ化したいと自ら動き、映画『愚行録』で組んだ石川慶監督とともに作り上げた、妻夫木聡ならではの肝いりの企画なのだ。役どころとしても、自分に自信がないものの決して良心を曲げない慎一を、どもりがちな弱々しい口調と強いまなざしで体現し、これまでにない演技を見せている。
物語は、元恋人の妻子を焼死させた罪で捕まった幸乃(竹内結子)が、法廷で死刑を宣告される場面から始まる。かつて幸乃と同じ小学校に通い“丘の探検隊”として友情を築いた慎一は、その裁判を傍聴し、お互いが困ったときは助けるという幼き日の誓いを守ろうとするのだが、幸乃本人は罪を認めもしないが無実だと主張することもなく、慎一たちと面会しようともしない。そんな絶望的な状況から慎一が幸乃の無罪を証明できるかが描かれていく。
最近、報道されたように殺人の罪で服役していた女性が再審請求をするなど、現実のニュースとシンクロする社会性はWOWOWオリジナルの「連続ドラマW」ならでは。さらに、社会的弱者である女児が保護者を失って悪意のある大人に虐げられるなど、現実でもありえるシビアな状況を描き、観る者の問題意識を揺さぶっていく。