『ぼくの名前はズッキーニ』監督が語る、ストップモーションアニメの可能性 「実写映画にすごく近い」

『ぼくの名前はズッキーニ』監督が語る、ストップモーションアニメの可能性 「実写映画にすごく近い」

「“愛は、無条件である”ということを伝えたい」

――物語の最後にある、新しい生命が誕生し、周りからたくさんの愛を注がれるというシーンは、明るい未来を予感させます。特に、生まれてきた赤ちゃんに対して、孤児院の子供たちが、母親ロージーに「(どんなことをしても)見捨てない?」と質問をしていたシーンが印象的でした。

バラス:あのシーンは、原作にはないオリジナルです。“愛は、無条件である”ということを伝えたいと思い、入れました。子どもと母親の間には、これがあるから嫌だとか、これがないから良いだとか、そういうことではない、無償の愛が存在しています。でも、孤児院の子供たちは家族とは別れて生活をしているため、母親の愛を知らない子も少なくない。子供たちがロージーに「見捨てない?」と聞くシーンでは、そんな彼らの母親と子供の関係性に対する好奇心が秘められています。同時に、本当に好きな人との関係は、ずっと変わらないというメッセージも込めました。

ーー母親からの愛を知らないシモンのセリフには、「誰にも愛されていない」という言葉がありました。そんなシモンですが、孤児院の仲間たちに誰よりも愛情を注いでいたように感じました。

バラス:私はこの物語の中で最も素敵なキャラクターはシモンだと思っています。人はたとえ難しい問題を抱えていても、仲間たちと交流し、助け合うことで、徐々に不安や苦悩が和らいでいきます。だけど、その仲間たちとの関係性が、永遠に続くとは限らない。映画の最後に、ある2人が孤児院を出て行ってしまいますが、残された彼らもまた、残された者同士で新しい生活を始めなければいけない。人生というのは、何があっても続いていきます。また、そういう一つの別れが、大きな成長に繋がっていきます。それを最初に理解したのが、シモンです。だから、お別れしたくないという気持ちがありつつも、彼らの背中を押し、見送った。自分たちの前からはいなくなってしまうけれど、育んできた友情がなくなるわけではない、気持ちでは繋がっているということを理解した上で、シモンはほかの友人たちに彼らとの別れを告げます。シモンはそこでグッと大人に成長したのです。

previous arrow
next arrow
previous arrownext arrow
Slider

 ちなみに、最後に凧が空中をひらひら飛ぶシーンがありますが、あれは映画全体を象徴してもいます。私たちは、風に乗って自由に飛んでいけるということを表現している一方で、人間関係のメタファーにもなっているんです。“凧は空に舞い上がっているが、糸で地上と繋がっている”というこの構図は、別れた2人は目の前にはいないけれども、しっかりと繋がっているんだよということを示すために入れました。

ーー最後の凧のシーンは、ソフィー・ハンガーが歌うエンディングテーマも印象的でした。

バラス:ソフィー・ハンガーはもともと好きなミュージシャンで、今回は作品すべての音楽を担当していただきました。私と同じような感性を持っている方で、オファーをすぐに快諾してくれたのですが、まさか受けてくれるとは思っていなかったので、嬉しかったですね。彼女は、スイス人ですが、ドイツ語圏の方なんです。ドイツ語圏のエリアは、スイスのマーケット的にとても重要なので、彼女の起用はコマーシャル的な意味合いも少しありました。でもそれ以上に、彼女の優しくて柔らかい歌声がこの映画にマッチしているなと。彼女が歌っているエンディングテーマは、もともとこの映画のために作ったわけではなく、ノワール・デジールというフランスのロック・バンドの楽曲をカバーしたものです。ですが、詩の中には、「風が私たちを運んでくれる」という一節があり、その言葉には先ほど私が話したすべてが含まれています。そういう意味でも、本作に非常に適しているなと思いました。

(取材・文・写真=戸塚安友奈)

■公開情報
『ぼくの名前はズッキーニ』
新宿ピカデリー、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開中
監督:クロード・バラス
脚本:セリーヌ・シアマ
原作:ジル・パリス『ぼくの名前はズッキーニ』(DUBOOKS刊)
原案:ジェルマーノ・ズッロ、クロード・バラス、モルガン・ナヴァロ
アニメーション監督:キム・ククレール
人形制作:グレゴリー・ボサール
音楽:ソフィー・ ハンガー
声の出演:峯田和伸、麻生久美子、リリー・フランキー、浪川大輔、早川舞、ちふゆ、小若和郁那、赤坂柾之、実川貴美子、熊谷海麗、松本沙羅、引坂理恵、宮本誉之
後援:スイス大使館、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
配給:ビターズ・エンド、ミラクルヴォイス
スイス・フランス/2016年/カラー/66分/ヴィスタサイズ/5.1ch/フランス語/原題:Ma vie de courgette
(c)RITA PRODUCTIONS / BLUE SPIRIT PRODUCTIONS / GEBEKA FILMS / KNM / RTS SSR / FRANCE 3 CINEMA / RHONES-ALPES CINEMA / HELIUM FILMS / 2016
公式サイト:http://boku-zucchini.jp/

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる