日本のドラマ界にとって大事な一手? 安藤サクラ、朝ドラ『まんぷく』ヒロイン抜擢を考える

 また、安藤が主演に抜擢されたこともさることながら、本作は社会的にも注目度の高い作品になるのではないかと麦倉氏は続ける。

「先日行われた安藤さんの会見に対して、小さい子供を育てているお母さんたちの共感の声が続々と上がっています。特に、最初にオファーをもらった際の『悔しくて泣いた』というコメントが話題になっていました。子育てを優先して、本来なら絶対に受けていた仕事を、泣く泣く断った。そんな経験をもった女性は、実際のところかなり多いのはないでしょうか。安藤さんが『DESTINY 鎌倉ものがたり』以降、しばらくは子育てに専念するつもりだったということを、この会見で知った方もたくさんいたはずです。しかしながら、安藤さん自身も葛藤の末、家族の後押しや『働き方改革』を推進するNHKの説得もあり、今回のオファーを受けることを選んだ。女性の働き方や子育てが問題になっている現在、周りのサポートを受けながらあえて仕事を選んだ彼女を応援しようという人は、彼女の同世代を中心に、かなり多いのではないでしょうか。それもあって、今回の抜擢は、社会的にも注目度の高いニュースとなったような気がします。

 ちなみに、近年ハリウッドでは、男性に比べて低い女性のギャランティの問題や、ハーヴェイ・ワインスタインに端を発するセクハラ騒動、それを受けての『#MeeToo』運動など、女性が役者をやっていくことの厳しさと、業界をはじめとする周囲の理解のなさが、社会的にも問題視されています。日本の芸能界は、その風潮を必ずしも真摯に受け止めているとは言い難い状況ではありますが、そういった状況であるからこそ、今回のドラマをいい形で成功させるのは、NHKにとっても、果ては日本のドラマ界や女優という職業にとっても、非常に大事な一歩になるのではないかと期待しています」

 放送はまだ半年も先になるが、安藤を支えていく今後のキャスト発表を心待ちにしながら、放送を見守っていきたい。

(文=大和田茉椰)

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