地上波や定額動画配信サービスを凌駕する自由さ 『#声だけ天使』が示す、新たなドラマのかたち
今年の4月で開局2周年を迎えるインターネットテレビ局AbemaTVが、初めて手掛けた完全オリジナルの連続ドラマ『#声だけ天使』。地上波テレビ局のドラマはもとより、近年注目を浴び続けている定額動画配信サービスのドラマをも凌駕する自由さに溢れた本作からは、また新たなドラマのかたちが生まれたことを実感させられる。
本作の舞台となるのは池袋。秋葉原や中野に代わり、オタクカルチャーの新たな聖地としてにぎわうこの街で、声優になることを目指す若者たちの不器用な青春群像劇が描き出されていく。2000年に放送され、当時の若者たちから絶大な指示を集めた伝説のドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)とはまるで異なる、現在の池袋の若者文化がしっかりと映し出されるわけだ。
ビジュアル重視の傾向が強くなった声優業界に疑問を抱き、基本中の基本である声だけで勝負しようと決めた主人公たちが、ユーザーから届いたリクエストメッセージに声をあてて贈り届けるサイトを立ち上げるところから物語は始まる。極めて現代的なバックグラウンドを有しながらも、テーマとして描き出すのは夢を追う若者たちのまっすぐな姿と、距離のある恋模様。そんなオールドファッションな部分が、現代的な要素と絶妙なバランスを保っていく。
声優の夢を追いながら、居酒屋でバイトをする主人公のケンゾウ。見た目もさえないどころか、バイト先の女の子へのアプローチも下手くそ。そんな彼がふとしたきっかけで、アウトローな仲間たちと共にサイト『イケてるボイスサービス(仮)』を立ち上げる。しかし、ケンゾウだけキャラ作りがうまくできずに、全くリクエストが送られてこない。