山田孝之×イッセー尾形が語る、巨匠ゴッホへの共感 「永遠に人生があるかの如く描いている」

山田孝之×イッセー尾形が語るゴッホへの共感部分

山田孝之「すごい度胸と努力と根気と愛があったからこそ完成した作品」

ーーこの作品は制作が決まった時から完成まで6年間かかってるそうです。

イッセー:監督さんはたぶん、きっと行き着く先がわからないまま動いていたのではないかな。一般的な映画づくりの手順と比べて、撮ってから100人の画家に描かせるという挑戦的な方法で作り始めてみても、それが果たして功を奏すものなのかどうかの結果は全てを作り上げた後でないと読めない。だからこそ、くじけないでやり続けた情熱っていうのは、ゴッホに対する尊敬や愛だったり、ただ「油絵が動く画を撮りたかった」という理由だけでは収まらないと思うんです。その思いが、1番最後の吹き替えの声を入れる僕のところまで届いて、背中を押されました。

ーープロデュースの仕事も実際にしている山田さんからみてはどう思いますか。

山田:すごい度胸と努力と根気と愛があったからこそ完成した作品だと思います。昔から絵で例えてしまうのですが、1人1本ずつ太さも毛の質も違う筆、違う色の絵の具を渡されて、「あなたはこの線を引いてください。あなたはここにこの線を描いてください」って出来上がった1枚の絵が映画になるので、すごい大変なことなんですよね。みんなが分かり合っていて、みんなで向き合ってないと作れないものなので。1人で出来るものだったらいいですけど、映画になると数十人、規模によっては100人を超えたり。だけど、たくさんの人たちで連携をとって、ひとつのものを作るというところは素敵だなと思いますし、改めて自分もそういうことに挑戦したいなと思わされましたね。 

『星月夜』

ーー実際にゴッホにはどういう印象を持っていますか。

イッセー:ゴッホは大好きでオランダの時に描いた暗い絵が特に印象に残っています。貧しい人たち、ネガティブな人たちをすごい寄り添って描いてる絵なのですが、一つひとつの線が本当に力強く書かれているんです。結果論ですけど、ゴッホは37歳で亡くなってるから、そうそう創作時間はない。でも彼は死ぬなんて思ってもいませんでしたから、永遠に人生があるかの如く描いている。そんなゴッホの姿を想像した時に非常に胸を締めつけられる思いをしたことがあって、それからファンになりました。この映画を見て、ゴッホの周りの世界が自分の中で立ち上がったというか、展示会などで1枚ずつしか見てなかった絵が映画で全部一本の線として繋がって、ゴッホは自分の人生をその都度、描いてたんだなと感じました。

ーーこの作品は「我々は自分たちの絵にしか語らせることはできないのだ」というゴッホが残したメッセージからこういう手法をとって作られたそうです。

イッセー:監督なりに“映画監督というのは映画に語らせるしかない”といったゴッホに対する絵、監督に対する映画、といった共感部分があったんだと思います。映画以外に自分の言いたいことは書けないし、映画だけが自分のメッセージになる。ゴッホが“絵”でしかないって言ったのと同様で、世界に対して、また自分自身に対してのメッセージは監督にとっても“映画”でしかない。いかに監督さんがゴッホに対してオマージュといいますか、捧げた映画なんだなと感じました。

イッセー尾形、山田孝之

ーーイッセーさんと山田さんが自分を語る上で、“これが”というものは。

イッセー:ネタです。1人芝居のホームグラウンドですけど、自分が創作していくそれをやっぱりやっていこうと思います。この作品の完成から改めて勇気付けられました。

山田:俳優として芝居することもそうですし、ものを作ることもそうですし、結局のところは表現です。表現することで生きることができていると感じます。

ーーお二人なりのこの作品の楽しみ方があれば教えてください。

イッセー:ゴッホは浮世絵に憧れて本場の日本に行きたいとずっと夢見てて、アルルを日本だと思って過ごしていたそうです。だからやっとゴッホが日本に来れたというような気持ちでこの映画を迎えることができました。最期の手紙ですけど、最期の望みの作品でもあるんだなと思ってこの映画をみてほしいです。

山田:僕が吹き替えをやることによって、若い人が興味を持ったり、僕みたいにゴッホの絵を見たことないけど映画を見てみようかなと思ってくれる人もいると思うので、そのきっかけになりたいと思っています。イッセーさんが話していたように、日本の浮世絵がゴッホの原動力になっていたとか、若くして死んだことなど、ゴッホの生き方に興味を持つ人が増えて、どんどん掘り下げていける作品になってほしいです。

(取材・文・写真=大和田茉椰)

20171106_gohg4
20171106_gohg2
20171106_gohg5
20171106_gohg3
20171106_gohg6
20171106_gohg7
20171106_gohg8
20171106_gohg9
20171106_gohg10
20171106_gohg11
20171106_gohg12
20171106_gohgpaint15
20171106_gohgpaint14
20171106_gohgpaint13
20171106_gohgpaint12
20171106_gohgpaint5
20171106_gohgpaint11
20171106_gohgpaint10
20171106_gohgpaint9
20171106_gohgpaint8
20171106_gohgpaint7
20171106_gohgpaint6
20171106_gohgpaint4
previous arrow
next arrow
20171106_gohg4
20171106_gohg2
20171106_gohg5
20171106_gohg3
20171106_gohg6
20171106_gohg7
20171106_gohg8
20171106_gohg9
20171106_gohg10
20171106_gohg11
20171106_gohg12
20171106_gohgpaint15
20171106_gohgpaint14
20171106_gohgpaint13
20171106_gohgpaint12
20171106_gohgpaint5
20171106_gohgpaint11
20171106_gohgpaint10
20171106_gohgpaint9
20171106_gohgpaint8
20171106_gohgpaint7
20171106_gohgpaint6
20171106_gohgpaint4
previous arrow
next arrow

▼サイン入りプレス プレゼント▼

山田孝之×イッセー尾形のサイン入りプレスを1名様にプレゼント。応募要項は以下のとおり。

<応募方法>
リアルサウンド映画部の公式Twitterをフォロー&該当ツイートをRTのみ。
※当選後、住所の送付が可能な方のみご応募ください。個人情報につきましては、プレゼントの発送以外には使用いたしません。
※当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
※複数のお申し込みが発覚した場合、ご応募は無効とさせていただく場合がございます。

<応募締切>
11月14日(火)

■公開情報
『ゴッホ~最期の手紙~』
TOHO シネマズ六本木ヒルズほかにて公開中
出演:ダグラス・ブース、ジェローム・フリン、ロベルト・グラチーク、ヘレン・マックロリー、クリス・オダウド、シアーシャ・ローナン、ジ ョン・セッションズ、エレノア・トムリンソン、エイダン・ターナー
監督・脚本:ドロタ・コビエラ、ヒュー・ウェルチマン
撮影監督:トリ スタン・オリヴァー、ウカシュ・ジャル
音楽:クリント・マンセル
字幕翻訳:松浦美奈
字幕監修:圀府寺司
配給:パルコ
(c)Loving Vincent Sp. z o.o/ Loving Vincent ltd.
公式サイト:www.gogh-movie.jp

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる