黒柳徹子自伝ドラマ『トットちゃん!』は朝ドラと似て非なるもの? “赤裸々な昼ドラ”の狙いを読む
『トットちゃん!』がテレビ朝日のお昼の帯で始まると聞いて、NHKの朝ドラのようになるのか、それともまったく違うものになるのかが気になった。というのも、黒柳徹子の半生を描くといいつつも、はじまりは黒柳の母の朝(ちょう)が描かれ、『ゲゲゲの女房』のヒロインの松下奈緒が演じる。また、朝の母親役を、黒柳朝の自伝エッセイをドラマ化した朝ドラ『チョっちゃん』でヒロインを演じた古村比呂が演じているなど、朝ドラのような題材、キャスティングだからである。
10月2日放送の初回を見たときには、オープニングの映像、合間に挟まれるミニチュアのセット、ナレーション、そして最後に登場する視聴者からの投稿写真など、朝ドラをここまで意識しているのかと驚いた。『やすらぎの郷』にはなかった路線である。
一話から二話では、黒柳徹子の母親である朝と父・守綱(山本耕史)の出会いからはじまる。北海道から音楽学校で学ぶためにやってきた朝は、ある演奏会に参加することになる。しかし朝は音楽の才能には恵まれておらず、そのせいでコンサートマスターの守綱をいらつかせるのだが、その気持ちがいつしか恋心に変わっていく様子を描いていた。
朝と守綱の恋は一気に盛り上がるが、厳格な朝の父親が朝を北海道へ連れ戻そうとする。しかし、演奏会の日まではと、東京で面倒を見ている叔父と叔母のはからいで、父親を説得する。ところが、朝は守綱に導かれるように彼が暮らすアパート『乃木坂上倶楽部』についていく。そして、そのまま守綱の部屋での生活を初めてしまうのだ。
ここら辺から、これは朝ドラとは違うことをやろうとしているのだと気づかされた。なぜならば、朝と守綱は、演奏会が終わったその晩(というかすでに朝だった)に、ひとつのベッドで眠り、起きたときは裸だったからだ。そして、朝が一階に降りると、ここで暮らしている伊藤華子(高岡早紀)など、一癖も二癖もある住人たちに、「ふしだらなことをしてしまったと思ってるのね」と言われてしまうのだ。
ここで、赤裸々な表現は極力マイルドに描く朝ドラ(それは視聴者層が違うのだから、どちらがどうということではない)と、この『トットちゃん!』との違いをはっきり見せつけられた。朝ドラと同じような題材を描くけれど、やろうとしていることはまったく別なのだと、それをちゃんとわからせるための一週間だったと思う。
しかも、赤裸々に描いたのは、恋愛だけではない。父親や守綱の支配的なところまでも、かなりストレートに描いている。父は家長として君臨し、母親や娘に対しても威圧的だ。夫となった守綱はお金がなくて朝が歌を歌って野菜などを調達してくると、物乞いのようなことをするなと、朝を部屋に軟禁する。
なぜ第一週で母の朝の自由奔放な部分や、男性たちの支配的な部分を赤裸々に描いたかというと、これからの展開を示唆するためにも思えるし、朝ドラと似て非なるものだということを知らしめたいのかとも思った。