石原さとみ、“ウザかわキャラ”から大人の女優へ 『忍びの国』鬼嫁役で見せた母性
30歳となり、大人の女優として幅広い演技での活躍が期待される石原さとみ。現在公開中の映画『忍びの国』では、伊賀最強の忍び・無門(大野智)の妻・お国役を演じている。綺麗だがとても気が強く、母性をも兼ね備えた大人の魅力あふれる役柄だ。そんな大人の役が似合ってきた石原の魅力と『忍びの国』について考察してみたい。
主人公の無門は、人でなしの"虎狼の族"と呼ばれる忍者衆のひとりで、金のためなら伊賀最強の忍びとなる凄腕の男。しかし普段は無類の怠け者であり、そんな怠け者に稼いでこさせようと尻を叩く女房がお国である。この映画の面白さは、まずキャスティング。大野はじめ鈴木亮平、伊勢谷友介ら出演者が、イメージ通りのキャラクターを演じているため、実にハマっているのだ。
一方、石原はお国という鬼嫁役を演じる。最初の印象は、美しいのだが無表情でとにかく怖い。一見、石原と鬼嫁は結びつかないが、無言の圧力からの一気に早口でまくし立てる勝気なキャラクターは、最近の彼女が得意としている役柄だ。石原は演じる役柄に関して取材を行うほど綿密に役作りをするタイプだが、『忍びの国』のインタビューで「まったく無理せずに、すっとお国になっていた気がします」(引用:石原さとみ、大人気女優に意外な悩み?「ここから脱出できたら成長できる気がする」)と語っていることから、お国の役は石原のキャラクターと合致する部分も少なくなかったのだろう。
いくつものパターンを撮影したという無門を睨みつけるシーンは、見ている観客が「ごめんなさい」と言いたくなるほど鋭い睨みだ。また、無門が叱られているシーンでは、まるで自分に言われているかのように胸に突き刺さる。ただこれは、無門がほかの世界を知らず、倫理的に欠けている部分を成長させたいという、親心に近い母性であり、お国による絶対的な愛ゆえの行為なのだ。この映画は、無門が人間の心を持ち成長して行くのが真のテーマだと言えるので、彼の人生を変えるお国はとても重要な役。若くして母性があるキャラクターを見事に演じている石原は、30歳になり女優としての新たなステージへと突入したとも言える。インタビューでは、30歳になったからこそ演じられたのかという質問に対し「今は、いろんなことが俯瞰で見られるようになり、人間の甘さや弱さ、本当の強さの意味がわかってきたので、その上でお国という役が理解できました」(引用:石原さとみ、大人気女優に意外な悩み?「ここから脱出できたら成長できる気がする」)とコメント。
20代の頃の石原は、コミカルで元気ハツラツな可愛らしい役柄が目立ち、“ウザかわキャラ”が似合う女優として、ラブコメに重宝されていた。アラサーとなったここ最近は、年々イメージが洗練されていくのと比例して、演じる役柄も幅広くなった印象だ。2015年の映画『進撃の巨人』で演じた調査兵団分隊長・ハンジ役は、巨人の生体に異常な興味を持つ変人で、力強く頼りがいのあるキャラクター。石原の「こんなの初めてー!」と絶叫する姿に、こんな石原こそが初めてだ! と観客に強烈なインパクトを残し、石原の演技を見るだけでも価値があると言われるほどの弾けっぷりを見せた。
続く2016年の『シン・ゴジラ』では、米国大統領特使カヨコ・アン・パタースンという外国人役で出演。ただでさえ早口かつセリフが多い映画で、英語と日本語を両方話す難役を演じきった。続いてドラマ『地味にスゴイ! 校閲ガール』(日本テレビ系)では、単にポジティブなだけではなく、問題に真摯に向き合う役柄に挑戦し、等身大の魅力的な演技を披露。ここ数年で見ていて楽しい役者へと一気に成長した印象だ。インタビューでは「今はすごく悩んでいる時期なんです。たぶん、ここから脱出できたら成長できる気がするんですけど…。あと3年後ぐらいが楽しみです!」(引用:石原さとみ、大人気女優に意外な悩み?「ここから脱出できたら成長できる気がする」)と語っている石原。だからこそ、様々な役柄にチャレンジし、試行錯誤しているのだろう。