藤原竜也主演『リバース』最終回はどうなる? ドラマオリジナルの結末への期待

 広沢を殺したのは……俺だったのか。

 深瀬(藤原竜也)は、ふたたび10年前と同じ状況にリバースしてしまった。知ってしまった真実を言うか、それとも最大の秘密として心に秘めておくか―。

 今夜いよいよ最終回を迎えるドラマ『リバース』(TBS系)。第9話を見終えた段階で、筆者は意を決して原作本を開いた。購入したのは随分前のこと。だが、いち視聴者としてこのドラマをリアルタイムで楽しみたいと思い、すぐに本棚に戻しておいたものだ。ページをめくるたびに、まるで深瀬が過去の記憶を巻き戻すように、ドラマの映像が脳内で逆再生される。まさにリバース体験。そして原作本は冒頭にも記した「広沢を殺したのは……俺だったのか」という深瀬の心の声で終わっていた。思わず、1ページ目に戻る。そこに書かれていたのは、告発文『深瀬和久は人殺しだ』の文字。結論は、最初から書かれていたのだ。これぞ、リバース。実に、あっぱれである。

 巻末の解説文によれば、“主人公が最後に自分が真犯人だと気づく”というお題が先にあり、湊かなえは『リバース』を書き上げたのだそうだ。このミステリーは成り立ちそのものもリバースなのだと知り、改めてその文才に感服する。同時に、原作の世界観を崩すことなく、オリジナリティ溢れるテレビドラマに編集した制作サイドの愛情も感じた。そして、今夜放送される最終話は、原作にはないドラマオリジナルの結末。原作ファンも、テレビドラマを楽しんでいた視聴者も同じテンションで楽しめる。

 話をドラマ『リバース』に戻そう。このドラマを見ていて、心がざわつくのは、それぞれの登場人物が良かれと思って行動しているのに、不幸な出来事につながってしまっているからだ。広沢(小池徹平)の恋人だった美穂子(戸田恵梨香)は、広沢がどんな大学生活を送っていたのか、人生最後の日を楽しく過ごせていたのか聞きたかった。だが、事故に罪悪感を持つ浅見(玉森裕太)や深瀬の口から出てくる言葉は、予想だにしていなかった広沢の死の疑惑。「聞きたかったのは、そんな話じゃない」広沢のことをちゃんと思い出してほしいと、告発文を送る。だが、それがきっかけとなって、美穂子が深瀬に騙して近づいたことも明るみになってしまう。

 私たちはどんなときも、思いと行動が伴っているわけではない。 感情が高ぶったときこそ、 思わぬ言葉が口を付いてでてしまうことがある。好きな相手に「 もう会いたくない」と言ってしまったり、 真実を言ったほうがいいと思いながらも「知りません」 と口をつぐんでしまうこともある。人はみんな、 その場その場でベストな行動をしているつもりだ。だが、 それが思わぬ残酷な展開を迎える。すべてを話した(つもりの) 深瀬も、心のどこかで美穂子に「仕方なかったよ。 深瀬くんは悪くないよ」と言ってほしかった。だが、 そんな望みどおりの言葉を聞くことはなかった。そして、 一度過ぎてしまった時間は、聞いてしまった言葉は、決して巻き戻すことはできない。

 これまで、深瀬は広沢の過去を探りながら、結果的に自分のことを知っていったように思う。広沢は、無色透明のような人物だった。相手の色に染まることで、広沢のカラーになった。ある人にとっては探し求めていた自分の化身のように、ある人にとっては決して本音をさらけ出さない掴みどころのない人物に映る。相手から求められない限り、自分から主張することはない。アレルギー体質のように、どうしようもない理由がない限りは……。

 自分から進んで始めた探偵のような行動が、結果として1番見たくなかった真実に行き着いてしまった。第9話までに起こした深瀬の行動は、すべて自分に返ってくる。浅見の教え子たちが起こした飲酒騒動。隠蔽しようとする生徒たちに、深瀬は“嘘をついた罪悪感はずっと消えない”と諭した。それは、真実を目の当たりにした深瀬にそのまま突きつけられる。

 職場のパワハラで不本意な扱いを受けていた谷原(市原隼人)や、夫婦間に問題のあった村井(三浦貴大)に、“今からでも間に合う”と問題に向き合うように勇気づけたのも、深瀬だった。教え子のひとりは正直に罪を認めた。谷原は自分の手で逆転のチャンスをつかもうと動き出し、村井も親の言いなりから卒業しようと決心した。そして、美穂子も告発文や谷原を線路から突き飛ばしたことを出頭。それぞれが新たな一歩を踏み出していく。次は、深瀬の番といわんばかりに。

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