『ゼロ・グラビティ』の経験はどう活かされた? 『ノー・エスケープ』監督インタビュー

ホナス・キュアロン監督インタビュー

「移民行為を犯罪化してはならないと思う」

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ーー主演のガエル・ガルシア・ベルナルはエグゼクティブ・プロデューサーも務めていますね。彼とは次回作でもタッグを組むそうですが、どのような点に惹かれたのでしょうか?

キュアロン:キャスティングする前からこの作品はガエルと一緒にやりたいと思っていたんだ。移民という、悪役やモンスターとして描かれがちな役柄に、ガエルのように皆が知っている顔を使いたかった。ガエルは、非常に共感を誘う魅力的な目をしている。それに、移民の問題にも熟知しているんだ。移民に関するドキュメンタリーの監督をしたり、そういった映画に出演したり、プロデューサーも務めていたりする。モイセスというキャラクターにも親近感を持ってくれて、脚本の手助けもしてくれたんだ。共演者にも、移民に関するエピソードなどを話してくれて、僕も非常に助かったよ。

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ーー今年の1月には、不法移民問題などの対策として、ドナルド・トランプ大統領がアメリカとメキシコの国境間に壁を作るという大統領令に署名しました。これによって本作が持つ意味も大きなものになったのではないでしょうか?

キュアロン:とても非現実的なことに思えたよ。砂漠のロケハンをしていると、いかに国境が恣意的なものかがわかるんだ。「あれ、今国境を越えたな」ということが何度もあった。あくまでも国境は人間が決めたもので、変なものだなとね。いろんな情報を集めていても、ジェフリー(・ディーン・モーガン)の役のような狂気じみた殺人者がいるという話は聞かないけど、砂漠に殺されてしまう移民は存在する。僕が思うのは、移民行為を犯罪化してはならないということ。犯罪としてああやって国境を越えることになると、砂漠を越えるという危険な手段に出るしかないから、悲惨な結果になってしまう。いずれにしても移民が砂漠に殺されてしまうのだったら、トランプ大統領が話している壁を建てるという政策には何の意味もないと思う。

(取材・文=宮川翔)

■公開情報
『ノー・エスケープ 自由への国境』
5月5日(金)TOHO シネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督:ホナス・キュアロン
プロデューサー:アルフォンソ・キュアロン
脚本:ホナス・キュアロン、マテオ・ガルシア
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ジェフリー・ディーン・モーガン
配給:アスミック・エース
原題:DESIERTO/2015年/メキシコ=フランス/88分/ヴィスタサイズ/5.1ch サラウンド/PG12
(c)2016 STX Financing, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:desierto.asmik-ace.co.jp

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