俳優ビートたけしが見せた“父性” 『ゴースト・イン・ザ・シェル』の演技を読む

ビートたけしが『GITS』で見せた父性

 ビートたけしが銃を構えるシークエンスもお約束のように用意されている。一瞬、『アウトレイジ』でも観ている錯覚に陥るが、実はここでも、ビートたけしの動き=アクションは、いつもより、やや緩慢だ。

 いつもより、ゆったりの口調。いつもより、緩慢なアクション。これら微細なズレが、やがて、ある感動的な表情に行き着く。

 そのシークエンスはなんと前半に用意されている。ヒロインに「お前には魂がある。魂とは……」と語るのだが、その表情が信じがたいほど柔和なのだ。ごく一瞬のことだが、その優しい表情が、映画そのものを護り、救出する。

 ビートたけしには、ビートたけしにしか表現しえぬ「父性」が存在する。わたしたちは、スクリーンを見つめ、それに出逢い、慄然とするだろう。

 あの数秒だけでも『ゴースト・イン・ザ・シェル』は、劇場に駆けつけるに値する一作たりえている。

『ゴースト・イン・ザ・シェル』BUILDING-JUMP本編映像

■相田冬二
ライター/ノベライザー。雑誌『シネマスクエア』で『相田冬二のシネマリアージュ』を連載中。otocotoで『Invitation』の元編集長・小林淳一と「SMAPとは何だったのか」緊急対談掲載中。最新ノベライズは『嘘の戦争』(角川文庫)。

■公開情報
『ゴースト・イン・ザ・シェル』
4月7日(金)全国公開
監督:ルパート・サンダース
出演:スカーレット・ヨハンソン、ビートたけし、マイケル・ピット、ピルー・アスベック、チン・ハン、ジュリエット・ビノシュ
配給:東和ピクチャーズ
(c)MMXVI Paramount Pictures and Storyteller Distribution Co. All rights Reserved.
公式サイト:ghostshell.jp

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