『沈黙ーサイレンスー』塚本晋也インタビュー「幸運にも『野火』と基本的なテーマが同じだった」

『沈黙ーサイレンスー』塚本晋也インタビュー

 『タクシードライバー』『ディパーテッド』のマーティン・スコセッシ監督が、遠藤周作の歴史小説を映画化した『沈黙ーサイレンスー』が1月21日に公開される。1988年にスコセッシ監督が原作と出会ってから28年、様々な困難を乗り越えながら実現した本作では、幕府による激しいキリシタン弾圧下にある17世紀の江戸初期を舞台に、棄教したとされる師フェレイラの真相を確かめるため長崎へやってきた、若き宣教師のロドリゴとガルペの苦難に満ちた葛藤が描かれる。アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライバー、リーアム・ニーソンといったハリウッド俳優に加え、日本からは窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、小松菜奈、加瀬亮らが参加していることも話題に。リアルサウンド映画部では、敬虔なカトリック信徒・モキチ役を演じた塚本晋也にインタビュー。『鉄男』や『野火』などの監督作で世界的な評価を受ける塚本は、スコセッシ監督の現場で何を感じたのかーー。取材数日前に作品を観たばかりの塚本に、出演の経緯やスコセッシ監督への思い、そして本作と『野火』との関係性についてまで話を訊いた。

「現役の映画監督で最も尊敬しているのがスコセッシ監督」

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ーー完成した作品をご覧になっていかがでしたか?

塚本晋也(以下、塚本):関わっていた期間が長かったので、観終わってどっと息をつく感じでした。感想が浮かぶというよりは、「はー、終わったのかなぁ……」というような。

ーースコセッシ監督とはもともと交流があったのでしょうか?

塚本:直接の交流はなかったものの、スコセッシ監督は本当に映画をたくさん観ていて、もう随分前ですが、こんな映画があるんだよと紹介するために、ご自身が持っていた『鉄男』のポスターをニューヨークの近代美術館かどこかに寄付してくれたという話を聞いたことがあって。そのエピソードが本当かどうかは僕も分からなかったので裏を取ってみたら、本当だということが分かって、かなり嬉しい思いをさせてくれたことがあったんです。なので、オーディションで初めてお会いしたときも「『鉄男』と『六月の蛇』が大好きなんだよ!」と喜んでくれて、それがまた非常に嬉しかったですね。

ーースコセッシ監督とのオーディションはどのような雰囲気だったのでしょうか。

塚本:素晴らしい体験でした。スコセッシ監督は役者としても本当に優れているんです。自然な演技を引き出してくれるような演技をスコセッシ監督自らやってくれるんですね。そのときに「これすごいぞ、現場でもやりたいな」と思ったのですが、オーディションに落ちてしまってもその思い出は一生の宝にできるなと。そしたらなんと受かってしまって、自分でも本当に驚きました。

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ーースコセッシ監督への思い入れも強かった?

塚本:高校生の頃に『タクシードライバー』を観たときから大ファンで、出演しようと思ったのもスコセッシ監督の存在が一番大きかったんです。現役の監督で最も尊敬する監督なので、最初の段階では、オーディションでスコセッシ監督と会うことや同じ空気を吸うことが目的でした(笑)。

ーー監督の立場としてもスコセッシ監督から受けた影響は大きかった?

塚本:大きいですね。『タクシードライバー』は数え切れないほど観ていますが、観るたびに新しい発見があるんですよね。トラヴィスという正しいとはいえない人が主人公で、人間の暗部を掘り下げつつも、不思議な光明を感じる映画でとても魅力的。麻薬的にやめられない映画で、僕も非常に大きな影響を受けています。

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ーー今回は役者としての参加でしたが、スコセッシ監督の現場から監督目線で何か感じることはありましたか?

塚本:役者として参加しているので、いわゆる“監督目線”はないんです。ただやはり大好きな監督の姿を目の前で見るわけなので、参考になることはたくさんありました。最も勉強になったのは、俳優への配慮の仕方ですね。スコセッシ監督は俳優に対して尊敬の心を強く持って接するんです。自分が監督するときは、自分が「OK!」と言えばもうすべてがOKで、その「OK!」を力強く言うことが大事だと思っていたんですが、もしかしたらそれでは足りないのかな……と。あとで俳優に「あの演技よかったよ!」などの声をかけるべきなのかなとか、いろいろと気づかされることがありました。『タクシードライバー』などの素晴らしい映画ができあがったのも、デ・ニーロさんとの絆によるものが大きいんだなと思いましたね。

ーー撮影ではスコセッシ監督の現場ならではのこともあったのでは?

塚本:それがですね、意外にないんですよ。あんなスペシャルな映画を撮る監督ですから、僕もその正体は何なんだろう、何かスペシャルな方法があるはずだと思っていたんですが、いわゆる普通の映画の作り方と同じだったんです。実を言うと、それが不思議と励みになりました。もちろん規模は大きいですが、晴れの舞台のハリウッドでも同じなんだなと。周りがデカいだけで、日本に置き換えた場合の作り方と同じ。だから日本の撮影現場の人たちにも「同じだよ!」と伝えたくなりました。

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