地獄の目隠し鬼ごっこが怖い! 『ドント・ブリーズ』を大ヒットに導いた発想力

地獄の目隠し鬼ごっこが怖い! 『ドント・ブリーズ』を大ヒットに導いた発想力

 とはいえ、『アバター』の役では鬼のように傭兵部隊を指揮していた、スティーブン・ラングが演じるおじいちゃんの殺傷アクションは、美学すら漂う過剰さを持っている。少しでも音を立てれば、1秒、いや、0.5秒もかからずに正確な射撃で対応するのである。この見事な動きは、座頭市すら連想させかっこいい。こういう凄まじさを要所で描くことによって、観客すら息を止めてスクリーンを見つめる状況が生まれる。スリラーの名匠、アルフレッド・ヒッチコック監督ばりの観客の心理支配だと言えば大げさだろうか。

 本作の危うい部分として、視覚障害を娯楽の要素として面白がっているのではないかという点が挙げられるが、このようなクールさと、彼が軍人として命令されてきただろう非人間的な行為や、さらに視力や自分の娘を失うなどして精神的に追い詰められていった状況がほのめかされることによって、ただ登場人物を襲い続ける単純なモンスターとして描かれているわけではないということが、一応のフォローになっている。何しろ侵入、窃盗被害に遭っているわけだから、彼の反撃は正当防衛の部分もある。

 侵入者と殺害者、どちらかを一方的に完全な「悪」と位置づけないところが現代的だ。侵入者たちは、逃げ出すチャンスに恵まれながら、男の持つ札束を諦めきれないがために、殺されるリスクに何度も飛び込んでしまう。彼らも、自動車産業が崩壊したどんづまりの街で、何かによって「奪われたもの」を取り戻そうとしているのだ。そしてお互いに「それ」を取り戻さない限り、このゲームは決して終わることがない。侵入者と殺害者はどちらも、社会状況や時代の犠牲者であり、またそこから抜け出そうと不法行為に手を染める犯罪者である。本作のラストシーンは、両者が根っこでは同じものであり、精神的な繋がりを持つ家族であることを暗示するように、ひたすら不穏である。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『ドント・ブリーズ』
12月16日(金)TOHOシネマズ みゆき座ほかロードショー
監督:フェデ・アルバレス
脚本:フェデ・アルバレス、ロド・サヤゲス
製作:サム・ライミ、ロブ・タパート
出演:スティーヴン・ラング、ジェーン・レヴィ、ディラン・ミネット、ダニエル・ゾヴァット
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

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