篠原涼子から石原さとみへ 『地味スゴ!』が作った、新しいアラサー女性像
また、アラサー女性が活躍するドラマの構造自体に大きな変化が生まれている。今シーズンの女性主演の主要ドラマは、2つに分けることができる。敵の出てこないアラサー女性ドラマと周囲は敵だらけのアラフォー女性ドラマである。
前者は、『校閲ガール』や、『逃げるは恥だが役に立つ』(新垣結衣演じるヒロインみくりはアラサーというには少し若いが)。後者は、米倉涼子主演の『ドクターX』、天海祐希主演の『Chef~三ツ星の給食』、菅野美穂主演の『砂の塔~知りすぎた隣人』だ。
あの手この手で潰そうとしてくる敵に対し、プロフェッショナルの技術を持つ主人公がひとりで立ち向かい、周囲を巻き込んでいく『ドクターX』と『Chef』の構造は、『anego』以降の篠原涼子が演じ続けている女性像と同じである。『砂の塔』の菅野美穂もまた、子育てに迷う主婦ではあるが、周囲は敵だらけの状況で、あの手この手で潰そうとしてくる敵に対し、必死に立ち向かう。
一方、『校閲ガール』、『逃げ恥』には敵がいない。それぞれの個性やコンプレックスを持つ登場人物たちは、互いを認め合い、誰かが困った時は手を差し伸べ、支えあっているのである。
ここから、アラサー世代に対する社会の変化を読み取ることができる。そしてこれは、ゆとり世代がアラサーになりつつあるということが大きいだろう。勝負の少ない環境で育ってきた世代は、人を敵とみなす前に理解しようとする。互いのコンプレックスを認め合おうとする。その傾向が、『校閲ガール』と『逃げ恥』の雰囲気に繋がっているのではないだろうか。
最終回では、悦子に念願のファッション誌「Lassy」異動のチャンスが舞い込んでくる。幸人の父親でもある作家・本郷大作(鹿賀丈史)が3度メインキャラクターとして登場するのは、初回から悦子に校閲が天職だと言い続け、「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」というタイトルそのままのネーミングを、最初の仕事を終えた彼女に与えた存在だからだろうか。
悦子は本当にやりたい職業につけるのか、それとも天職は校閲ガールなのか。彼女はどんな人生の選択をするのだろう。
(文=藤原奈緒)
■番組情報
『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』
日本テレビ他 毎週水曜夜10時放送
出演:石原さとみ、菅田将暉、本田翼、和田正人、江口のりこ、田口浩正、足立梨花、伊勢佳世、曽田茉莉江、松川尚瑠輝、杉野遥亮、ミスターちん、長江英和、店長松本、麻生かほ里、高橋修、鹿賀丈史(特別出演)、芳本美代子、青木崇高、岸谷五朗
原作:宮木あや子「校閲ガール」シリーズ(KADOKAWA・角川文庫)
脚本:中谷まゆみ、川﨑いづみ
演出:佐藤東弥、小室直子ほか
制作協力:光和インターナショナル 製作著作:日本テレビ
公式サイト:http://www.ntv.co.jp/jimisugo/