『べっぴんさん』きみちゃん役でブレイク! 土村芳「この瞬間が私にとっての“べっぴん”です」
きみちゃんの“進化”
——土村さんが「きみちゃん」になるときはどんなスイッチが入っているんですか。
土村:何回もお芝居をするのが上手ではないので、本番一回にかける集中、そこに持っていくのに時間がかかるときもあれば、瞬発でやっているときもあったりで、何とも言えないですねえ。感覚を大事にしなくてはいけないことと、考えながら演じなければいけないところは使いわけているかもしれないです。きみちゃんは完璧過ぎないところが人間らしいですよね。良子ちゃんの夫が(戦地から)帰ってきたときは嫉妬をするのに、自分の夫が帰ってきたときは周りを気にせずに喜んじゃう。自分で“器が小さい”と認められるその人間臭さが、きみちゃんの魅力です。
——きみちゃんが病院で寝たきりになっていて、すみれと久々の再会をするシーンがとても印象に残っています。
土村:放送されたものは、すみれちゃんが扉をノックしてから病室に入ってくるシーンから始まっています。でも、カメラはすみれちゃんがノックする前からかなり長い時間まわしていたんです。きみちゃんがぼーっと天井を見つめながら、女学校時代の歌をしばらく口ずさんでいて。実際にはその前置きはほとんど使われていなかったんですけど、すみれちゃんたちと会う前の孤独な気持ちをカメラの前で演じさせてくれたからこそ、再会を喜ぶ演技ができたのかなと思います。私の中ではどっぷり演技に身を置くことができたシーンでした。
——撮影が始まってから約半年が経過しましたが、土村さんにとって、きみちゃんはどんな存在になっていますか。
土村:きみちゃんには何段階かの“進化”があるんです。だから、新しい台本が届く度に、新しいきみちゃんに出会えるんです。それが毎回新鮮ですね。女学校の頃から、きみちゃんが持つまっすぐに物事を見つめる気持ちは根底にあるんですけど、外からの刺激や自分の中の成長で、彼女はどんどん変わっていく。実は、撮影中ではないときも、とっさに出たリアクションで、自分なのか、きみちゃんなのか分からないときもあるんです。この現場にいると、自然とずっときみちゃんになってしまう。共演者のみなさん、スタッフのみなさんのおかげで、なんの抵抗もなく、毎日すっとできるのかなと思います。
——放映中(〜第9週)のきみちゃんは、現在の土村さんと同世代の設定ですが、これからどんどん歳を重ねたきみちゃんを演じるわけですよね。そのあたり難しいんじゃないでしょうか。
土村:きみちゃん、年齢を重ねるごとに面白くなっていくんですよ。ここから先はまだ言えないですけど(笑)。ただの儚い、弱い女性じゃなくて、どんどん女性としての力強さを身に着けていくんです。だから、観て下さるみなさんに気にいってもらえるように演じなくちゃなと奮闘しているところです(笑)。