『Mr.Robot/ミスター・ロボット』は現代版『タクシードライバー』 “格差社会”と“革命”の描き方はどう変化したか?

『ミスターロボット』が米国民を魅了する理由

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 『Mr.Robot/ミスター・ロボット』シーズン2が描き出すのは、まさしくそんな世界のあり様……成し遂げたと思った「革命」が、体制に何ひとつ致命傷を負わせることなく、無効化してゆく世界の物語である。しかも、「f・ソサエティ」の面々は、いまやFBIから追われる身となっている。再び覚醒した主人公エリオットは、この困難な状況をどう潜り抜け、さらなる「戦い」を仕掛けてゆくのだろうか。主演のラミ・マレックはもちろん、彼のハッカー仲間であり、「f・ソサエティ」の構成員である女性ダーリーン(カーリー・チャイキン)、幹部としてのし上がることを目論見ながらも失墜、「シリーズ1」の最後には行方不明となってしまった「Eコープ」の技術担当上級副社長タイレル・ウェリック(マルティン・ヴァルストロム)、そしてエリオットの庇護者たる「ミスター・ロボット(クリスチャン・スレーター)」など、「シリーズ1」の面々が再び登場しながら、「革命後」の世界における体制との「戦い方」をドラスティックに描くことになるという「シリーズ2」。

 それはある意味、1999年に映画『ファイト・クラブ』が提示したテーマを、「2015年の世界」のなかで描き出そうとした「シーズン1」を踏まえながら、さらにその先へと物語を押し進めようとする、実に果敢な試みであるように思われる。短期的な混乱ではなく、この社会を転覆させるためには、ひいては「より良い世界」を作るためには、どんな行動が必要とされるのか。無論、そこには体制vsハッカーといった局所的な構図のみならず、大衆の自覚と動員も必須となってくるのだろう。その結末は依然として不明だ。現在本国アメリカと、ほぼ同時進行形で紡ぎ出される『Mr.ROBOT/ミスター・ロボット』の物語。それは、ゴールデングローブ作品賞に輝いた「シーズン1」の成功や評判とも相まって、数ある海外ドラマのなかでも、とりわけ注目度の高い作品となっていくに違いないだろう。

■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「CUT」、「ROCKIN’ON JAPAN」誌の編集を経てフリーランス。映画、音楽、その他諸々について、あちらこちらに書いてます。

『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』シーズン2予告映像

■作品情報
『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』
シーズン1&シーズン2 Amazonプライム・ビデオで独占配信中
製作総指揮:サム・イスマイル、スティーヴ・ゴリン、チャド・ハミルトン
出演者:ラミ・マレック、クリスチャン・スレーター、カーリー・チャイキン、ポーシャ・ダブルデイ、マルティン・ヴァルストロム
参考:https://www.amazon.co.jp
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