三上博史、『柿崎真一』で再ブレイクか? 90年代スター俳優が今もフレッシュな理由

 世代交代が順調に進んでいるかと思われていたドラマ界において、松嶋菜々子や滝沢秀明、江口洋介など、90年代に第一線で活躍した俳優たちが再び主役を務める作品が多い今期の夏ドラマ。各ドラマのストーリーやキャラの全貌がだいたい見えてきた中で、徐々に面白くなってきているのが、あの名優・三上博史が深夜ドラマで主演を務めることで話題となった『遺産相続弁護士 柿崎真一』(読売テレビ・日本テレビ系)だ。

『遺産相続専門弁護士 柿崎真一』の面白さとは

 三上が演じる遺産相続専門弁護士・柿崎真一は、故人の遺した遺産に隠された“本当の価値”を探り出しながら、時には強引な方法で依頼人のトラブルを解決していく話。『探偵物語』や『私立探偵 濱マイク』といった日本テレビ系列の探偵モノの流れを汲んだ独特の世界感が特徴で、雰囲気も役者もファッションもレトロ感がありながら、スタイリッシュな作品に仕上がっている。

 第1話では、鼻歌を歌いながら墓を掘り起こすシーンと、酒井若菜とのベッドシーンというぶっ飛んだ幕開けで目を引いた。横浜を舞台としながらもどこか無国籍感が漂っていて、ジョニー・デップのような風貌で、一見だらしないが人情味があり、謎の過去を持つ主人公・柿崎真一の怪しげな魅力をさらに引き立てている。また、破天荒な推理を展開しながらも、いつも円満に問題を解決するのも観ていて気持ちがいい。近年はシリアスな作品に出演することが多かった三上だが、「もう一度自分に挑戦してみたかった」と語っているように、本作ではコメディー要素の強い演技を披露しているのも新鮮だ。比較的悪ノリができる深夜ドラマということもあってか、楽しそうに演じているのが印象的で、三上の新たな魅力が発見できる。

 『探偵物語』の流れを汲んだ作品としては、前期に松田翔太主演の『ディアスポリス−異邦警察−』(MBS・TBS)があったが、ハードボイルド色が強く、かなりドギツイ内容だったため、視聴者を選ぶところもあった。一方で『柿崎真一』はコメディー色が濃いため、深夜にまったり観るのにちょうど良い。可愛くて生意気な森川葵や、酒井若菜や豊原功補などの演技も安定感があり、無駄のないチームワークで安心して観ていられる。今期の夏ドラマは、松嶋菜々子の『営業部長 吉良奈津子』や滝沢秀明の『せいせいするほど、愛してる』なども、90年代から活躍するスターを起用しているが、役者の新たな一面を引き出したという点では、『柿崎真一』は特に成功しているのではないだろうか。

俳優・三上博史というミステリアスな存在

三上博史は、長年のキャリアを持ちながらもバラエティ番組などにはほとんど出ないため、ベールに包まれたミステリアスな俳優だ。一般的には、80年代後半から90年代にかけてトレンディドラマのエースとして数々の作品に出演しアイドル的人気を博した俳優というイメージだが、元々はアングラ演劇界の重鎮である寺山修司に見いだされ、15歳で映画『草迷宮』でデビューしている。メジャーとアングラ、陰と陽の2つを兼ね備えて成功した珍しいタイプである。「30歳を過ぎたくらいから、お客さんの目線の方がすごく重要になってきて、どうやって作品を楽しんでもらえるかってことを考えるようになりました。(中略)『あれ? 三上博史ってどこに出ていた?』というくらいに変えないと、作品が面白くならないと思っています」(三上博史「僕は意地汚い役者」ベテランらしからぬ貪欲さで日々"バトル")との考えの持ち主で、パブリックイメージが定着しないように、SNSやバラエティ番組に出ることなどは極力避けているそうだ。役柄にしろ私生活にしろ、固定のイメージを根付かせないという俳優としての姿勢が、今も視聴者に新鮮さを感じさせる一番の要因だろう。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる