『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』興行との対比から考える、『シン・ゴジラ』大ヒットの真価

 さて、そこで改めて『シン・ゴジラ』と、庵野秀明の総監督としての「前作」『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』との興行比較である。2012年11月に公開された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』は、オープニング2日間に動員77万1764人、興収11億3100万4600円を記録。これは動員で『シン・ゴジラ』の公開週土日2日間の1.87倍、興収で1.81倍の数字。それを前述したように全国224スクリーンという『シン・ゴジラ』の約半分の公開館数で成し遂げていたのだから、「恐るべし、ヱヴァンゲリヲン」と言うしかない。

 しかし、これは逆に言えば、「庵野秀明の正真正銘の新作」であることが明らかとなった『シン・ゴジラ』にとって、まだまだこの先も伸びしろが大いにあるということを意味する。この段階で具体的に数字を出すと「ハードルを上げすぎだろう」と各方面から怒られるかもしれないが、『破』以上は確実、『Q』に限りなく近い数字、つまり50億前後の累計興収は十分実現可能な目標値だと思う。

 いずれにせよ、これまで庵野秀明作品に馴染みのなかった「ゴジラ」プロパー層からの評判も非常に高い本作は、東宝にとっても、庵野秀明にとっても、「新規開拓」という意味において申し分のない成果を残すことになるだろう。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮新書)発売中。Twitter

■公開情報
『シン・ゴジラ』
全国東宝系にて公開中
出演:長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ
脚本・総監督:庵野秀明
監督・特技監督:樋口真嗣
准監督・特技統括:尾上克郎
音楽:鷺巣詩郎
(c)2016 TOHO CO.,LTD.
公式サイト:http://www.shin-godzilla.jp/

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