クドカンはゆとり世代の“童貞”をどう捉えている? 『ゆとりですがなにか』第四話の複雑さ

 一方、相変わらず、心が読めないのが山岸だ。話の筋だけ追うならば「鳥の民」で、まりぶに怒鳴られた後、坂間といっしょに田之口の家を訪ねて、遺影に手を合わせたことで、心を入れ替えたように見える。その時の山岸の表情の撮り方が絶妙で、心を入れ変えたようにも見えるし、まったく変わってないようにも見える。ここまで説教が成立しない山岸の姿を描いてきたことを思うと、今回も空振りなのかもしれないが、こればっかりは次回にならないとわからない。

 山岸の姿と並行して描かれる授業参観で発表する小学生たちの演劇が「オズの魔法使い」というのは、悦子の教育実習の終わりを、不思議な国での冒険を追えて、故郷へと帰還するドロシーの姿に重ね合わせたうまい見せ方だ。同時に、ドロシーを取り囲む、脳がないカカシ、心がないブリキの木こり、勇気がないライオンたちの姿は、ゆとり世代という欠陥品のレッテルを貼られながらも、何とか社会に出て、自分の居場所を見つけようとする坂間や山岸たちの姿と重なって見える。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■番組情報
日本テレビ新日曜ドラマ『ゆとりですがなにか』
4月17日(日)22:30スタート
出演:岡田将生 松坂桃李 柳楽優弥 安藤サクラ 吉田鋼太郎
脚本:宮藤官九郎
「ゆとりですがなにか」公式サイト

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