嵐・大野智、『世界一難しい恋』の不器用男はなぜ“当たり役”に? 活動スタンスの変化から考察

 嵐の大野智が主演を務めるドラマ『世界一難しい恋』(日本テレビ)が好調だ。大野智にとって初となるラブコメ、しかも連続テレビ小説『あさが来た』で主演を務め、一躍注目を集めた女優・波瑠との共演ということで、放送開始前は賛否さまざまな意見があったが、蓋を開けてみれば第4話までの平均視聴率は12.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。データニュース株式会社が運営するテレビウォッチャーの調査でも、第2話の満足度が3.89と、同サービスが定める高満足度の基準3.7を大幅に上回る結果となった。

 大野はこれまで、『怪物くん』(10年・日本テレビ)や『死神くん』(14年・テレビ朝日)などの出演作品から、漫画原作のキャラクターを得意とするイメージが強かった。ドラマ評論家の成馬零一氏は、書籍『嵐はなぜ史上最強のエンタメ集団になったか』にて、大野の演技の魅力を「役者としての自分をどこか突き放した視線で見つめているかのような強い客観性」にあると指摘していた。そのクールな態度こそが、現実離れした役柄にマッチしていたのだろう。なにを考えているのかわからないミステリアスな雰囲気が、これまでの大野にはあった。

 一方で今作『世界一難しい恋』は、性格に難があったために婚期を逃してきた男のラブコメで、大野演じる鮫島零治は有名ホテルチェーンの社長という肩書きがあるものの、決して非現実的なキャラクターではない。恋を成就させようと不器用ながら奮闘する様は、むしろ人間味に溢れている。実際、大野自身もそのキャラクターの印象について、「一見とっつきづらそうだけど、まっすぐでピュアな人だなって印象があって。ま、ピュアすぎて恋がうまくいかなかったりするんですけど(苦笑)、それがかわいらしくもあり。憎めない人なんだろうなって思いましたね」(参考:『QLAP』4月号より)と述べている。ぶっきらぼうな態度は取っていながらも、視聴者からはその本心が透けて見えるような演技は、滑稽味とともに愛らしさを感じさせるのだ。

 では、なぜ大野はこうした役柄を自然に演じられるようになったのだろうか。おそらくその背景には、アイドルとしてのスタンスの変化もあるではないか。グループ内でも不思議な雰囲気を醸し出している大野は、『VS嵐』(フジテレビ)などの番組でメンバーからいじられることも少なくないが、決して口数が多いほうではない。基本的にクールなキャラクターはいまも同じだ。しかしながら、2014年に行われた結成15周年記念コンサート『ARASHI BLAST in Hawaii』のMCでは、過去に嵐としての活動に悩んでいたことも赤裸々に明かしつつ、涙ながらにファンやメンバーへ感謝を伝えるなど、人情に厚い一面も見せるようになってきている。バラエティ番組で時折見せる苦笑いにも、どこか親しみを感じてしまうのは筆者だけではないだろう。そして、一見するとクールだが、実は感情豊かな人物であるという現在の大野のパブリック・イメージは、まさに鮫島零治を演じるのにぴったりで、新たな“当たり役”といっても過言ではない。

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