『HK/変態仮面』はなぜ再び映画化できたのか? “面白いボツ企画”を実現する福田雄一の作家性

『変態仮面』、福田雄一の作家性を読む

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 原作はかなり昔に連載が終了した作品だが、福田雄一によるオリジナル脚本のため、決して古さは感じさせない。物語の構造は、いわゆるヒーローもののフォーマットを踏襲したコメディということになるのだろうが、いかんせん、作品からくる熱量が凄まじい。それは、例えば、鈴木亮平の体づくりがあまりにも見事であり、その完璧なフォルムに鬼気迫るものを感じるということも一因だろう。とにかく、出演者・制作スタッフの気迫がビンビン伝わってくるのである。

 加えて、登場人物はみな、それぞれの理由で悩み傷ついているのだが、しかし、それはたいていパンティの話だったりするのだが、あまりにも真剣で大真面目なので、ついついテーマを深読みしてしまう。主人公である色丞狂介(鈴木亮平)が直面する「変態ではいけないのか?」という問いは、自分らしくありたいと願うすべての人が共有する悩みと言えるのではないか。「変態」とは普通とは違うことであって、では普通とは何なのか、普通になる必要が本当にあるのか、普通とは違ったままでは絶対にダメなのか…この苦悩が決してシリアスになり過ぎないのは、「変態仮面」という作品ならでは。振り切れたコメディとして、しっかり楽しめる作品となっているのだ。

 福田雄一は、「変態仮面」シリーズは3部作であり、次作を作りたいと語っている。ややネタバレになるが、本作では、色丞狂介(鈴木亮平)は、(ある意味、当たり前だが)使用済みパンツを被ることをヒロインの姫野愛子(清水富美加)から肯定されるところまでは至っていない。出演者・制作スタッフから、こちらに、熱いボールは投げられた。これをキッチリと打ち返し、パート3で、「変態ではいけないのか?」という問いの答えを期待したい。

■昇大司
1975年生まれ。広告代理店にて、映像作品の企画などを行う。好きな映画は『アマデウス』『ラストエンペラー』『蜘蛛巣城』など。

『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』予告映像

■公開情報
『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』
5月14日(土)、新宿バルト9ほか全国ロードショー
出演:鈴木亮平、清水富美加、柳楽優弥、ムロツヨシ、水崎綾女、皆川猿時、新井浩文、やべきょうすけ、勝矢、足立理、上地春奈、木根尚登、佐藤仁美、片瀬那奈、池田成志、安田顕
監督・脚本:福田雄一
原作:あんど慶周「THE ABNORMAL SUPER HERO HENTAI KAMEN」(集英社文庫コミック版刊)
配給:東映
(c)あんど慶周/集英社・2016「HK2」製作委員会
公式サイト:hk-movie.jp

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