峯田和伸×麻生久美子×岡田惠和、夢の布陣はなぜ実現した? 河野英裕P『奇跡の人』インタビュー

『奇跡の人』プロデューサーインタビュー

「峯田さんだからこそ、集まってくれる人たちがいました」

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——「複合的なドラマ」とおっしゃいましたが、テーマはずばり、一択と花のラブストーリーですか?

河野:はい。あと、目が見えず、耳が聞こえない、コミュニケーションするための情報がシャットダウンされている海という女の子を描くことは、人間が存在していくために必要なものはなんだろう? というテーマも描ける設定だと思っています。それをラブストーリーに混在させることで、他に類を見ないドラマに仕立てられると思いました。

——峯田さんにとって、本作がテレビドラマ初主演となります。起用の理由は?

河野:大好きだからです。ロッカーとして、バンドマンとして、ミュージシャンとしては当然のこと、役者としてもすごい才能の持ち主だと思っていましたが、テレビドラマには出てくれないだろうなと。でも、僕ももう48歳。いつまでドラマを作れるかわからないので、思い残すことがあるとイヤなので、ダメ元でオファーしたところ、「やります」と言ってくれました。岡田さんの脚本と麻生久美子さんの力です。とはいえ、峯田さんをNHKさんがよくOKしてくれたなとも思います(笑)。好きな人は熱烈に好きですが、知らない人にとっては「誰この人」という極端な存在なので。でも、その峯田さんだからこそ、集まってくれる人たちがいました。

——一択は、峯田さんへの当て書きかと思いました。

河野:違うんですよ。でも、一択役にロックな身体性をもつ峯田さんが決まったことで、岡田さんの台本作りへの影響は大きかった。台本上で“ロック”という言葉を出す以上、岡田さんはロックや、ロックな生き方や、ロックな台本について、考えぬいたと思います。その結果、『ど根性ガエル』以上にストレートな台詞になっているかもしれません。

——一択が恋に落ちる花役を、麻生久美子さんにオファーした理由は?

河野:麻生さんが軽やかな人なので。障害のある娘をもつ母親とダメ男の重くなりがちなラブストーリーを、軽やかな表現で飛び越えていける方に演じてほしかったんです。麻生さんにOKしてもらった段階で、「元ヤンの麻生さんが見たい!」と思い、元ヤン設定に変えました(笑)。

——その他のキャスティングで意識したことは?

河野:いつもとは違う環境でできる今回は、いつも出ていただいているお馴染みの人と、仕事をしてみたかった方とを混ぜてみました。初めての方は、宮本信子さんと山内圭哉さん。宮本さんは岡田さんの書くものがお好きとのことで、台本を読んでもらってお引き受けいただきました。まさか!と思って超うれしかったです。撮影前の打ち合わせから宮本さんの凄さにびっくりしました。何がすごいのか、全部すごいとしか言えません(笑)。宮本さんのこのドラマへの考え方やアイデアがものすごく参考になりました。世界がひろがりました。

 山内さんが演じる花の夫・正志は、一択と花のラブにおける枷として非常に重要なキャラクターです。僕や岡田さんの作品は、根っからの悪人は出てこないと言われることが多いんですが、今回それがイヤで、悪いやつを描きたかったんです。正志は子供を捨てていく人だし、人間なら誰しもが思ってしまうネガティブな本音を口にしてしまえる人。岡田さんは最初、正志を書くのを嫌がったんです。でも、「正志です!」「絶対にいい役者を捕まえてきますから、正志を書いてください」と言い続けた結果、岡田さんは正志を書くのが楽しくなっていったと思います。その証拠に、正志が出てくると話にドライブがかかっていますから。でも、正志も結局本当はいいやつなんですけどね(笑)。

——スタッフはどういう座組ですか?

河野:フレームを外して自由にスタッフィングできたので、園子温監督の映画作品や、三浦大輔監督・峯田さん主演映画「ボーイズオンザラン」などの撮影を担当していた映画畑のカメラマンさんや、フジテレビ系列の美術チームなど、バラバラです。演出の狩山俊輔は『Q10』や『妖怪人間ベム』のチーフ演出として一緒に仕事しました。心根が優しくて、アクションが撮れるところがこの作品に合っていると思い、彼に頼みました。

——アクションシーンがあるのですか?

河野:海ちゃんのような子供を育てるということは、毎日が戦いなんです。ヘレン・ケラーで有名な、座ってナプキンをつけてスプーンで食事をさせるシーンも、かなりアクション性が高い。海ちゃんを演じる萌乃ちゃんは8歳なので、演出力でカバーして、見応えのあるアクション性のあるドラマにしたいと思っています。

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